盲導犬の一生とは【パピーウォーカーボランティア経験談】

皆さんは、街中で盲導犬を見かけたことはありますか?

白いハーネス(胴輪)を付け、目の不自由な方を誘導するように一緒に歩いている犬のことです。

以前はシェパードが多く訓練されていましたが少々厳ついため、現在は見た目の可愛らしさや資質などからラブラドールレトリバーが多く活躍しています。

著者はパピーウォーカーといって、盲導犬の一時ボランティアをしていた経験があります。

盲導犬とは目の不自由な方が安全に行きたい時に行きたい場所へ行けるよう、小さい頃から様々な訓練をしていますが、一体どんな訓練や仕事をし、一生を送るのでしょうか。

今回は盲導犬の一生をご紹介したいと思います。

盲導犬候補生の誕生

盲導犬候補となる子犬は、盲導犬繁殖犬の両親から生まれます。

盲導犬に向いている性格の子犬を産むため、繁殖犬には訓練犬の中から健康で穏やかな落ち着きのある犬が選ばれます。

母犬の負担にならないよう、きちんと管理された出産計画をしますが、盲導犬になった子犬を多く産んだ母犬は、他の母犬より出産回数が1~2回多いこともあるそうです。

そんな母犬から産まれた子犬は、生後2ヶ月まで母犬や兄弟犬と一緒に健やかに育つのです。

盲導犬

パピーウォーカーというボランティアと共に

生後2ヶ月になると母犬や兄弟犬から離れ、パピーウォーカーと呼ばれるボランティアに預けられます。

1歳になるまでその家族の一員として様々な経験をしながら、人への愛情や信頼、人間社会のルールを学んでいきます。

ここでの経験は「社会化」と呼ばれ、将来盲導犬となった時、人との生活がスムーズに送れるよう、とても大切なものなのです。

盲導犬候補生から訓練犬へ

1歳の誕生日を迎えると、パピーウォーカーの元を離れ、いよいよ盲導犬としての訓練が始まります。

訓練犬としてまず1番大事なのは、人との関わりを楽しむ事、訓練を楽しむ事です。

課題が出来たら「Good」と褒め、「Good」は嬉しい事だと認識させながら、指示(コマンド)を出す訓練士との信頼関係も築いていきます。

large-1画像引用元:http://weheartit.com/

褒める「Good] ダメ「No」
座れ「Sit」
伏せ「Down」
来い「Come」
待て「Wait」

など、様々な指示(コマンド)を、毎日同じ事を繰り返しながら覚えていくのです。

訓練というと厳しいものを想像される方もいると思いますが、盲導犬の訓練は人とコミュニケーションを取りながら、楽しんで行われるのです。

盲導犬への評価試験

様々な訓練をしたからといって、すべての訓練犬が盲導犬になれる訳ではありません。訓練の途中で評価試験が行われ、その試験に合格した訓練犬のみ次の訓練へと進めるのです。

全ての試験に合格し、パートナーとなるユーザーさんとの相性も合い、晴れて盲導犬となれる訓練犬は全体の3~4割ほどしかいません。いかに盲導犬になるのが難しいかが分かります。

試験を通過出来なかった犬は盲導犬にはならず、ボランティアさんに引き取られ家庭犬としての道を歩む事になります。

この選択は試験の出来だけでなく、訓練犬各々の性格や資質なども考慮され決められるので、盲導犬として仕事を楽しめない犬は盲導犬になる事は出来ません。

このように訓練犬は自分に1番合った将来を決めていくのです。

盲導犬

目の不自由な方のパートナーとして

盲導犬になると、目の不自由な方のパートナーとして一緒に様々な場所へ出かけることになります。

ここで誤解されがちなのが、「盲導犬はカーナビではない」という事です。

優秀な盲導犬とはいえ地図を覚えている訳ではないので、行きたい場所に勝手に連れて行ってはくれません。

ユーザーさん自身が目的地までの道を把握し、どの道を進んだら良いか、どの角を曲がったら良いかなどの指示を出すのです。その指示に従い危険物を教えたり避けたりするのが盲導犬の仕事なのです。

盲導犬の象徴・白いハーネスを付けて仕事中の時は、犬に触ったり気を散らすことは決してしないで下さい。犬が混乱したり集中力をなくしてしまう恐れがあるため、とても危険なことなのです。

その代わり、ユーザーの方にちょっとした声掛けをし周りの状況を教えてあげると、とても助かるそうです。

盲導犬の引退年齢とその後~

目の不自由な方のパートナーとして一緒に歩んできた盲導犬も、10歳を目途に引退となります。

引退犬とはいえまだまだ元気なので、引退犬ボランティアさんに引き取られ余生を家庭犬としてゆったりと過ごしたり、協会で用意されている引退犬の施設で過ごしたりします。

現役の盲導犬同様、引退犬にも健康のための手厚い医療体制が引かれています。
このように大切に育てられた盲導犬は、家庭犬の平均寿命より長く生きているとの報告もあります。

まとめ

厳しい訓練や仕事をしていると思われがちな盲導犬も、人への愛情、信頼関係が一番大切だと分かります。常にパートナーの傍に寄り添い、一緒に仕事をすることに喜びを感じているのです。

現在の日本では盲導犬の数が1000頭余りと少ないこともあり、まだ盲導犬の受け入れ体制が不十分なのが現状です。

目の不自由な方が自由に安全に行きたい場所に行けるよう、盲導犬を受け入れる側も知識や情報を身に着ける必要があるのかも知れません。

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