まだまだペットとしての歴史が浅く、情報量も少ないフクロモモンガ。
今回はそんなフクロモモンガに多い、病気を一覧にしました。
また病気は早期発見が大切なので、日頃からチェックしておくべきポイントをまとめたので参考にしてください。
モモンガの健康チェックポイント
病気の早期発見・早期治療はとても大切です。
モモンガは、言葉では体調の異変を訴えてくれませんので、日頃の健康チェックによって、モモンガのSOSにいち早く気づいてください。
日々の世話をしながら、健康チェックをする習慣をつけるといいでしょう。
食事を与えたときの食付きや、食べ物の残り具合からは食欲がわかります。
トイレ掃除のときには排泄物の状態をチェックできますし、遊んでいる様子からは体の動きがおかしくないか、元気があるからといったことを見ることができます。
よく慣れたモモンガなら、体のあちこちを触りながら、しこりなどができていないかチェックできるでしょう。
できれば毎日、無理なら気づいたことがあるときだけでも、健康日記をつけておくことをおすすめします。
環境の変化がストレスになって体調を崩したのではないか、いつもと違うものを与えたことが下痢の原因になっていないか、などを知ることができるでしょう。
動物病院での診察時に、役立つことと思います。
チェックポイント
食欲をチェック
食欲はあるでしょうか。
多少の食欲の波があっても、好物を与えてもすぐに食べようとしなかったり、一晩中なにも食べないようなことはありません。
食べ方がおかしくないか、食べこぼしがないか、また飲水量の変化にも注意してください。
口の周囲が汚れているのは、よだれが出ている場合があります。
排泄物をチェック
下痢、軟便をしていないか、あるいは便の大きさが小さくなる、量が減る、出ていないということはないでしょうか。
便の色の変化にも注意を。
水のような便が出ているのはかなり深刻です。
尿の量、色の変化、排出時に痛そうにしないないか,出にくそうにしていなか、などです。
行動をチェック
ふらふらしている、ぎこちない歩き方をしている、後ろ足を引きずっている、体をまっすぐに保てない、ようなことはありませんか。
活動時間なのにじっとしている、逆に落ち着きがなかったり急に攻撃的になるといったことはないでしょうか。
皮膚や被毛をチェック
脱毛していたり、皮膚に傷、フケなどはないでしょうか。
体の一部だけ執拗に舐めたりかじったりしていないでしょうか。
具合が悪いと毛づくろいをしないので、毛並みが悪くなることがあります。
目をチェック
目が白くなっていませんか。
元気なら目の輝きが力強いものです。
生き生きとした目をしているでしょうか。
目やに、目を気にしてこするということはありませんか。
泌尿生殖器をチェック
出血や分泌物はありませんか。
ペニス脱を起こしていないでしょうか(特にフクロモモンガ)。
下腹部、育児嚢(フクロモモンガ)を気にしていう様子はないでしょうか。
呼吸をチェック
頻繁にくしゃみをしたり、鼻水を出していないでしょうか。
開口呼吸や、全身を使って呼吸をしている様子はないでしょうか。
モモンガの代謝性骨疾患

フクロモモンガの病気の4~5割が代謝性骨疾患ではないかと考えられるほど、非常に多い病気です。
代謝性骨疾患とは、骨が作られる仕組みがうまく働かずに骨に異常が起こる病気の総称で、くる病や骨軟化症、骨粗しょう症などが知られています。
骨は、体の成長が止まればそれ以上長く(太く)なることはありませんが、骨自体は破壊と構築が繰り返され、常に新しい骨が作られています。
ところが何らかの理由で新しい骨が作られにくくなると骨が弱くなり、曲がったりスカスカな骨になってしまいます。
骨が弱くなり、足を引きずって歩いてたり、骨がもろくなるのでかんたんに骨折します。
原因
フクロモモンガの代謝性骨疾患の大きな原因は
- カルシウム不足
- カルシウムとリンの不均衝
- 小腸からカルシウムやリンの吸収を促進して、骨を作る働きのあるビタミンD不足
などです。
ほかにはホルモン異常も代謝性骨疾患の原因となります。
診断は、レントゲン検査で骨密度や骨のゆがみを確認し、血液検査によって血中カルシウム濃度などを測定します。
普段どのような食事を与えているかお、診断の助けになります。
症状
動きたがらず不活発、ケージの登り降りをしなくなる、後ろ足の麻痺、四股の麻痺(不全麻痺、麻痺)、関節の腫れ、体を支えきれずに骨が内側や外側にゆがむ、麻痺など。
ある日突然、後ろ足が麻痺していることに気づくこともあります。
治療
カルシウム剤、ビタミンD製剤を投与するとともに、日常の食事を見直し、カルシウムとリンの不均衝に注意します。
症状によっては、ケガを防ぐために高さのあまりないケージで飼ったほうがいい場もあります。
予防
バランスのいい食事を与えることが重要です。
成長期、妊娠中や授乳期など特にカルシウムが必要となる時期には、特に栄養バランスには注意しましょう。
特に子供のモモンガは、成長期にともない骨格や筋肉が形成されるため、栄養要求量も多くなります。
成獣以上に食事の質と量に注意しましょう。
理想的なカルシウムとリンの摂取バランスは、2~1:1です。
カルシウムとリンは血液中でバランスをとって存在しているため、リンを過剰に摂取すると、腸管内でカルシウムと結びついて排出されてしまいます。
ひまわりの種や果物はカルシウム:リン比のバランスが悪い食べ物です。
モモンガが好むミールワームも同様なので、栄養価を高めてから与えるようにしましょう。
補助的にカルシウム剤やビタミンD製剤を添加するのもいいことですが、適度な量にとどめておきましょう。
カルシウムが過剰になったり、ビタミンDの過剰摂取によって骨からカルシウムが溶け出して、血中カルシウム濃度が上がると、他のミネラルの吸収を抑制したり、腎臓結石を起こしやすくなります。
モモンガの栄養要求量は分かっていませんが、現状では食事には約1%のカルシウム、0.5%のリン、1500IU/kg(乾燥重量)のビタミンDを含むのがいいとする報告もあります。
脂質過多にも注意を。
腸管に脂肪が吸着すると、カルシウムを取り込みにくくなります。
早期発見も重要で、異常な動きをよくしっていれば、おかしいことにすぐ気がつけるでしょう。
爬虫類では、紫外線灯を使うことの重要性が知られています。
モモンガにおいても、紫外線を豊富に浴びる機会がほとんどないために、カルシウム不足になりやすいのではないかと考えられていますが、紫外線灯の使用の是非などはわかっていません。
モモンガの自傷

フクロモモンガの病気の1~2割を占めるのが自傷です。
病気というよりも、さまざまな理由によってモモンガが自分で自分の体を傷つけてしまうという問題行動で、外傷や感染症などの二次的な問題が心配されます。
オス、メスに関係なく起こり、生後6ヵ月~2年の間、特に生後9ヵ月によく起こると報告もあります。
原因
外傷などの身体的なものと、心理的なものがあります。
ささいな外傷でもモモンガが違和感をもつと、かじり始めてしまいます。
ポーチやおもちゃのゆるんだ糸が引っかかり血行不良になり、壊死した指、手術後の縫合糸やギブス、薬を塗られた部位、ペニス脱、巣箱などで傷つけたペニス、尿路感染症や細菌、原虫などの感染があるときの総排出孔、腸閉塞で不快感や痛みがあるときの腹部などをかじります。
仲間のモモンガや飼い主とのコミュニケーション不足、狭すぎるケージ、退屈、騒々しい、犬や猫などがそばにいるなど飼育環境が悪い、慣れていないのに構いすぎるなどのストレスも自傷の原因です。
性成熟したオスが交尾できるメスがいないために性的フラストレーションを起こして自傷したり、過度なペニスのグルーミングによってペニス脱を起こしてそれをかじることもあります。
こうした自傷行為には、
- 無気力
- 遊びがたがらない
- 食欲の変化(食欲がない・食欲亢進)
- 睡眠のパターンが変わる(夜になっても活発に遊ばずに寝ている、昼間も起きている)
- 慣れたのに鳴いてばかりいる
- 攻撃的になったように感じる
- バック転などの常同行動を長い時間行っている
といった、予兆と考えられるものがあります。
症状
多いのは
- 手足の指
- 尾
- 陰部の周囲
をかじることですが、口さえ届けばどこでもかじります。
指先、尾の先だけでなく、脚や腕をどんどん噛んでいったり、尾の根本まで至ることも。
胸部や腹部、総排泄孔、オスではペニス、陰嚢、メスは育児嚢もターゲットとなります。
毛や皮膚にとどまらず、筋肉組織、骨までかじってしまうことがあります。
かじれば痛みは当然あるはずですが、それでもやめようとせず、鳴きながらかじっていることもあり、飼い主にとっても大変つらいものです。
患部から細菌感染し、敗血症を起こせば命に関わりますので、ダメージが大きくならないうちに治療してください。
治療
状態により、止血、消毒、縫合、鎮痛剤の投与、抗生物質の投与など。
手足や尾、ペニスが壊死している場合には切断するという選択肢もあります(ペニスの付け根から排尿するので、先の方を切断しても排尿の妨げにはなりません)。
しかし、縫合すれば治るとは限らないのが自傷の問題で、治療したところをまた気にしてかじることもあります。
ストレスを減らすよう、環境改善をすう必要があります。
また原因となっている疾患があるなら各種検査をし(便検査、尿検査、レントゲン検査、血液検査など)、治療します。
自傷行為に役立つアイテム
エリザベスカラーをつけ、患部に口が届かないようにする方法があります。
今は小動物用のエリザベスカラーも売っていますので、試してみる価値あります。
エリザベスカラーをつけていると、ケージに登り降りしたりポーチに入るなどの普通の行動が妨げられ、モモンガにはストレスになります。
しかし繰り返し自傷することを考えれば、少なくとも傷が治るまでは必要かもしれません。
食事ができているか、水が飲めているかを確認し、必要に応じて強制給餌を行います。
また他の個体と一緒のケージで飼っている場合は、治るまで別にしましょう。
予防
よりよい環境とコミュニケーションがなによりの予防です。
仲間を迎えたり(相性の問題がありますが)、一緒に遊ぶ時間をきちんと作ってあげましょう。
広いケージで飼い、退屈しないようにすること、遊びグッズを追加したり、置き場所を変えるなどの刺激も必要です。
食事をいろいろな場所で与えたり、好物をわらのおもちゃの隙間に入れておくなど、行動レパートリーを増やすことも考えてください。
自傷は、モモンガにとっても飼い主にとっても、心身ともにとてもつらいものです。
どんな些細なことでも、おかしいと思ったら慎重に様子を見てあげてください。
モモンガのペニス脱

フクロモモンガの病気の1~2割を占めるのがペニス脱です。
フクロモモンガの大きな特徴の1つは、オスのペニスの先端が2つに分かれていることです。
性成熟すると、オスはペニスを出したり引っ込めたりすることがあります。
グルーミングのため、遊び、性的フラストレーションがあるためと考えられます。
長い時間出たままになっているとペニスが乾燥して戻りにくくなったり、生殖器周辺の毛を巻き込んで元に戻らなくなることがあります。
すぐに戻すことができれば問題ありませんが、時間が経つと壊死してしまいます。
症状
ペニスが出たままになっている、時間が経つと赤黒く腫れている、壊死して黒くなっている、モモンガがペニスを気にして舐めたりかじっているなど。
治療
家では、乾燥して戻らない場合には、水で湿らせて戻るようにします。
毛が絡みついていたり、時間がたっているときは動物病院で処置してもらいましょう。
早く気がついてあげることが重要です。
モモンガの下痢
消化器官のトラブルは、フクロモモンガの病気のうち1~2割を占めています。
原因は多岐にわたり、サルモネラや大腸菌などの細菌、ジアルジア、トリコモナスなどの原虫は、下痢の主な原因の1つです。
牛乳に含まれる乳糖を分解できずに下痢をする、新奇な食べ物を与える、柑橘類を多く食べるなど、不適当な食事によるものもあります。
また、環境の変化やそれに伴うストレスは自律神経に影響し、腸の正常な働きを阻害するため、下痢の原因となります。
症状
軟便、下痢便、ひどくなると血が混じっていたり、水様便をします。
痛みがあるためじっと丸まっている、体重の減少、脱水、原虫に寄生があると成長の遅れなど。
治療
検便して病原体を調べます。
細菌感染なら抗生物質を、原虫の寄生なら抗原虫薬や駆除薬と投与するなど、病原体に応じた投薬を行います。
駆除薬は、原虫のライフサイクルを考え、7 ~10日以上続けて投与します。
下痢によって脱水症状になっている場合は補液をします。
複数のモモンガを飼育している場合、寄生が確認された個体はわけ、駆虫が終わるまで別々に飼いましょう。
同居していたモモンガの治療が必要になることもあります。
まとめ
今回はフクロモモンガに多い病気4つ
- 代謝性骨疾患
- 自傷行為
- ペニス脱
- 下痢
の、原因と治療法、症状と、早期発見のために日々のチェック項目をまとめました。参考になれば幸いです。