毛触りがよく、丸くて大きな瞳で遊びに誘ってきたり、元気に走り回る姿が印象的なシー・ズー。
喜びを表す尻尾も感情たっぷりにずっとフリフリするので、他犬種よりも、尻尾の毛がやけにもつれやすいところも、「シー・ズーあるある」の可愛さのひとつではないでしょうか。
小さなお子さんから年配の方まで幅広い層にずっと人気があるのもうなずけます。
人の気持ちを理解しようとし、一人遊びも得意で自立心もあるため、どんな家族のペースにも上手に合わせてくれます。
今回は、シー・ズーの歴史や特徴のほか、仔犬~老犬までの飼育時のポイントやしつけ対策などをご紹介していきます。
これからシー・ズーを迎えたいと思っている方には、ペットショップ以外にもブリーダーや保護団体、里親サイトから迎えることができるということも、合わせてご紹介させていただきたいと思います。
シー・ズーの歴史
シー・ズーの原産国:チベット
シー・ズーの起源:犬種の起源については諸説ありますが、シー・ズーが実在したという最も古い記録は、中国は、唐時代(618~907)にまでさかのぼります。
シー・ズーは元々、チベットの「ラサアプソ」と中国の「ペキニーズ」の混血によって誕生したと言われています。
神の使いと崇められ、王宮でのみ飼うことを許された特別な犬種でした。
唐時代というのは、チベットから仏教がものすごい勢いで中国に布教されていった時代です。
仏教の経典や豪華な仏具、仏面などとともにチベット原産の獅子に似た犬種である「ラサアプソ」がラマ教の僧侶たちに連れられ、そのときに中国に渡来したといわれています。
チベットでは空想のライオンである獅子は猛々しい強さと霊力、秘められた正義と忠義心を持つ聖なる動物として崇拝されていました。
獅子に似ている「ラサアプソ」もそのようなイメージを持たれていました。
清朝時代になるとラマ教の教王であるダライ・ラマが、中国の皇帝にラサアプソを貢ぎ物としてたびたび贈っており、王宮で飼われていたペキニーズとの交配が行われ、誕生したのがシー・ズーとされています。
この犬は獅子のように立派な姿をしていたことから、獅子狗(シー・ズー・クゥ)と名付けられました。
シー・ズーは皇帝一族のお気に入りとなり、清朝末期には西太后が犬舎まで保有し1000頭以上も飼われていたほどでした。
中国からイギリスそして世界中へ
王族以外でも裕福な商人などがシー・ズーを飼えるようになると1934年に北京ケネルクラブが設立され1938年には犬種標準が作成されました。
イギリスでは、1930年に繁殖が始まったとされています。
初めの頃はラサアプソとの区別がされておらず、別犬種として独立したのは、1934年以降になります。
1935年には、イギリス・シー・ズークラブが設立され、シー・ズーたちはヨーロッパ諸国やオーストラリアへと渡っていきました。
アメリカでは、第二次世界大戦中にイギリスに駐屯していた兵士たちが帰国の際に何頭かのシー・ズーを持ち帰ったのが始まりとされています。
その後アメリカンケネルクラブの血統台帳に登録され、1969年には公認犬種となりました。
日本へのシー・ズーの紹介はさらに遅く、昭和30年代の終わり頃だったと言われています。
現在アメリカでは、シー・ズーとラサアプソの人気はほぼ同じですが、日本とイギリスではシー・ズーが人気です。
シー・ズー雑学
かつて北京ケネルクラブで定められてシー・ズーの犬種標準書によれば、シー・ズーは以下のように表記されていました。
「頭部はライオン、ボディは熊、足はラクダ、尾は羽ぼうき、耳はヤシの葉、歯は米粒、舌は真珠のような花弁、動き方は金魚に似ている」
例え方が面白いです。
シー・ズーの性格
理解力があり賢く、活動的で、敏活、友好的でいて自立心もあります。
よく動き回り陽気にはしゃぐ姿はシー・ズーが愛される理由の一つです。
飼い主のことが大好きなので、いつも飼い主のことを理解しようとし、見知らぬ人にはよそよそしく横柄な態度も見せることもあります。
やさしい性格ですがプライドは高く、喜怒哀楽はっきりと自己主張する犬種です。
飼い主がリーダーとしてふるまい、信頼関係が築けていれば精神的にも強いので、多少の厳しいトレーニングもこなすことができ、小さな子供とも安心して遊ばせられます。
シー・ズーの特徴
鼻を中心に菊の花のように毛がはえているところから、「クリサンセマム(菊の花)ドッグ」と呼ばれることがあります。
シー・ズーは目と鼻の間(マズル)が短い短吻犬種で、下あごが上あごの歯にかぶさり前の方に突き出す形のアンダーショットです。
目は丸くて大きく澄んだ目をしていて、耳は大きく垂れさがった耳をしていて、全体に長く伸びる柔らかな被毛が美しく、ほとんど毛も抜けません。
美しい被毛は、ショードッグでは長い被毛が一層上品さを引き立てますがラッピングをして保護する必要があるため、手入れは手間がかかります。
毎日のブラッシングは欠かせません。一般的に飼育する場合には、被毛を短くトリミングをすることで、手入れを簡単にすることができますが、柔らかい被毛はもつれやすいため日々のブラッシングは必要です。
シー・ズーの体重・大きさ
✔体重
4.5~8.1kg
理想体重は4.5~7.3kg
✔体高
26.7㎝を超えてはならない
最も重要なのは、タイプとブリードの特徴を兼ね揃えていることであり、決してサイズのみで判断してはならないとされています。
参考本:全犬種標準書
寿命
平均寿命は15~17歳位です。
他犬種よりも体力の衰えがそれほど見られず、比較的長生きと言われています。
必要な運動量
運動量は多くありませんが、シー・ズーは太りやすい犬種なので散歩は毎日朝晩20分くらいは確保しましょう。
運動不足になるとすぐに肥満になる傾向があります。
ボール遊びやおもちゃ遊びも好きな犬種なので室内運動も心がけましょう。
毛色の種類
シー・ズーの毛色はスタンダードとしての規定はなく様々なカラーが許されています。
日本でよくみられるカラーは、パーティーカラー(2色の毛色)です。
ゴールドと一言で言っても、マホガニー、レッド、オレンジ、ハニーなど多彩で見た目の印象も少しずつ異なります。
✔ゴールド&ホワイト
JKCの血統書では、BROWN(ブラウン)です。ソリッドカラーですが顔の部分が黒っぽくなるので海外をはじめ日本でもブラックマスクとよばれて親しまれています。
性格はいつも注目を浴びたいタイプ。
このカラーの犬を探す際には突然変異ではなく、ブラックの系統で繁殖されてきた犬をおすすめします。
✔ブラック&ホワイト
日本にシー・ズーが上陸したころから人気の毛色です。
性格は日本における系統の特色として、繊細で少々気難しい性格の犬が多い傾向があります。
海外でみられるカラーは、ソリッド(単色)やアイラインや鼻と口元がレバーといった日本では珍しいカラーも少なくありません。
✔ブラック
ソリッドカラー。胸などに白い毛が混じることもあります。近年人気が高まっている毛色です。
性格は、ブラックの犬は全体的に陽気でパワフルな傾向があります。
アメリカのドッグショーでは、かなり古くからブラックやブラックマスクのシー・ズーが出ていました。
日本でも最近は少しずつ目にするようになってきたので、今後はソリッドの人気が高まるかもしれません。
シー・ズーのミックス犬種
シーペキ(ペキニーズ×シー・ズー)
画像引用元・https://www.pet-coo.com/
シープー(トイプードル×シー・ズー)
画像引用元:https://www.min-breeder.com/
チワシー・ズー(チワワ×シー・ズー)
画像引用元:http://pets-kojima.com/
シー・ズーがかかりやすい病気
<歯周病>
シー・ズーの歯は、生後5~6か月後で乳歯から永久歯へと生え変わります。
乳歯が抜けないまま永久歯と並んで生えてしまうことも多く、歯並びが悪いので歯垢がたまりやすく歯周病を起こしやすくなります。
歯垢は細菌のかたまりでアルカリ性の口腔内で容易に繁殖し、仔犬のときから歯磨きを毎日すれば予防できます。
シー・ズーはアンダーショットなので食餌をとるのが上手ではありません。
食べかすやヨダレが口の周りについてただれることもあるので常にタオルで拭くなど清潔に保つようにします。
<甲状腺機能低下症>
ホルモンの異常によって発症し、シー・ズーの成犬にみられます。甲状腺の機能が低下して血中に分泌されるホルモン量が減少することで発症します。
左右両側の体幹部に脱毛がみられ被毛は乾燥し光沢がなくなります。後肢の大腿部や首輪の下など圧迫を受けている部分に脱毛が生じることもあります。
尾はラットテールと言われるようにネズミの尻尾のようになります。皮膚には色素沈着、肥厚、腫脹、フケがみられます。多くは膿皮症を併発しています。
治療
甲状腺ホルモンを補充して正常な値に近づけるようにします。
<原発性突発性脂漏症>
シー・ズーは脂漏症が発症しやすい犬種です。
脂っぽい皮膚とフケの増加が特徴で、症状が進行すると皮膚の臭いが強くなり二次感染によるかゆみを伴います。
若いころから症状が出ることが多く首の前側や胴体の背中および両側、腹部、外耳に脱毛や脂漏、落屑が起こり皮膚の臭気が強くなります。
症状が進むとかゆみを訴え、細菌やマラセチアの二次感染によって症状が悪化します。
治療
シャンプーによる皮膚のコンディション調整が大切です。脂漏症による皮膚のワックスや角化が進んで増えたフケを角質溶解シャンプーで取り除き皮膚の状態を整えます。
二次感染があれば抗生物質などで治療します。
<アトピー性皮膚炎>
アトピーと診断されるシー・ズーは多く、お腹や顔、手足、腋の下に皮膚病が見られかゆみを伴い、おおよそ半数は外耳炎を併発しています。
早いと6か月ぐらいから発症しますが1~2歳で発病するケースが多いとされています。
皮膚の病変は主に腹部、顔面(とくに目の周囲)手足の指や指間、腋の下、外耳(慢性外耳炎)に現れます。
皮膚の赤みや脱毛からはじまり、皮膚の肥厚や色素沈着、脂漏や紅斑が進んできます。
ブドウ球菌やマラセチアという細菌の感染によって症状が悪化しているケースもよくみられます。
治療
シャンプーは家庭でもできる最も効果的な治療です。保湿効果のあるものを選びます。
細菌やマラセチアの感染に対しては抗生物質や酵母に有効な薬剤を投薬します。
こまめに部屋を掃除してハウスダストと呼ばれるダニの死骸などが含まれている埃などを生活環境からできる限り取り除きます。
不飽和脂肪酸の含有率が考慮されたアレルギー体質のペットフードを与えたり、サプリメントをとったりすると有効な場合があります。
<僧帽弁閉鎖不全症>
歳をとるにつれて増えてくる病気です。
心疾患のうち75~85%が僧帽弁閉鎖不全症で、最終的に心不全を起こします。
僧帽弁に閉鎖不全が起こると、左心室から左心房へ血液が逆流しそれによって症状が現れます。
進行すると左心不全による肺水腫を原因とする呼吸困難が起こり、喉に物がつかえたような咳をしたり運動時に座り込んだり倒れるなどの運動不耐性を示すようになります。
治療
徐々に左心不全を起こしてくるためそれに対する治療を始めます。
基本的に治る病気ではないため、今現れている症状をできるだけ抑えて、QOLの改善を高めます。
<結膜炎>
細菌・真菌・ウィルス・寄生虫の感染、免疫異常、涙液分泌異常、異物の混入などがあります。
結膜炎は結膜の炎症も総称で、結膜には眼球結膜と眼瞼結膜があります。
眼球結膜は非常に薄く無色透明でいわゆる白目の表面を覆っているもので、眼瞼結膜は眼球結膜に比べて厚く不透明で若干赤く瞼の内側の表面を覆っているものです。
また瞬膜(第三眼瞼)の眼球側と瞼側の表面も結膜に分類されます。
症状は、結膜の充血と目ヤニなどであり、その他目の病気(緑内障、ぶどう膜炎)でも初期症状として結膜が充血することがあるので、それらの病気との鑑別が大切です。
治療
主に点眼薬ですがその治療にあったものを選択します。
<白内障>
白内障の多くは老化によるもので7歳を過ぎたころから水晶体に混濁が出始めます。
老齢性白内障は犬種問わず加齢とともに起こります。進行の程度は様々で混濁はあっても障害視覚を失うことがない犬もたくさんいます。
治療
目薬や飲み薬による内科的方法と手術による外科的治療があります。
白内障があっても視覚が保たれている場合には内科的治療が選択されますが、効果はさほど期待されるものではありません。
シーズーは熱中症に注意
<熱射病・熱中症>
シー・ズーのような鼻ぺちゃ(頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い)犬種のことを、短頭種と言います。
短頭種は、マズルが短いため暑い空気が直接体内に入ってくることや、生まれつき鼻による呼吸が浅いこと、また鼻腔の中が狭いことなどが原因で、パンティング(ハァハァする呼吸のこと)による体温調節があまりうまくいきません。
犬の周囲の温度が32度以上になり、さらに興奮状態や社内や窓を閉めた部屋など密閉された空間におかれたりすると、熱射病や熱中症になるおそれがあります。
熱射病や熱中症になると犬の体温は41~46度に上昇し、放置すると脱水症状や脳浮腫などを起こし死亡してしまいます。
肥満だったり、仔犬や老犬の場合はさらに熱射病や熱中症にかかりやすくなります。
舌をだらりと下げて激しく「ハァハァ」と呼吸し身体がとても暑い場合には応急処置として冷水や氷水、保冷剤などで体温を下げできるだけ早く動物病院に連れていきましょう。
シー・ズー飼育時の注意点
飼う前に
シー・ズーは日々の手入れを必要とする犬種です。
手入れにある程度時間がかけられることや、定期的にトリミングサロンに連れていく経済的余裕も必要です。
長生き犬種のため、そのあいだに皮膚や眼のトラブルも抱えやすく動物病院へ連れて行ってあげられることも大切です。
仔犬のとき
シー・ズーは毛玉をつくらせないためのブラッシングはもちろん、涙やけもしやすいので目周りや、口周りの汚れもふき取って清潔にすることが大切です。
頑固な面もあるため、一度嫌だと思うとブラシをもっただけで飼い主に威嚇することもあるため仔犬のうちに早めに慣らすことが必要です。
スキンシップを取りながら、少しずつブラシを当てていきましょう。
家の外での社会化訓練も生後6か月頃から徐々に始めていき、社会化期に重要なことは、人から触れられる刺激に慣らすこと、環境に慣らすことです。
人間社会が好きになれるよう、安心して散歩や外出ができるよう犬の様子を見ながら訓練していきます。
成犬のとき
眼のトラブルが多いので、定期的にトリミングサロンへ連れていき眼の中に毛が入らないようカットしてもらいましょう。
一番活発に動き回る時期なので、シー・ズーの目線に観葉植物の葉などが眼に刺さらないようにする工夫も必要です。
暑さには弱いので、夏場などはエアコンをつけて快適な環境をつくってあげましょう。
冬には洋服を着せることも多くなりますが、毛玉やもつれの原因になるので着せっぱなしはやめましょう。
老犬のとき
体力がなくなってくると免疫力も下がり脂漏症などこれまでになかった症状がでやすくなります。
耳の中が臭うようになってきたり、かゆがる仕草を見せる場合には、早めに動物病院に連れていきましょう。
白内障になってくると眼が見えなくなってきますが、シー・ズーは他犬種に比べ老犬になっても動き回る子も多いので、家具にぶつかったりすることもよくあります。
角部分をカバーするなどの対策をとってあげましょう。
階段を登ろうとして落下することもあるので、ペットゲートをつけるなどして安全に快適に過ごせるようにします。
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