犬の歯周病治療の1つ、無麻酔治療のメリット・デメリット

基本的に犬の歯周病も人間と同じで、歯垢の蓄積→歯石の蓄積→細菌の繁殖→歯周病という流れをたどります。 歯垢は、歯磨きなどの刺激で容易に剥がれ落ちますが、時間が経つにつれて数百種類の細菌が繁殖し、一部が毒素を放出します。この毒素による攻撃と、毒素を排除しようとする免疫細胞の攻撃の刺激によって引き起こされた炎症が「歯肉炎」です。

歯垢が2~3日程度放置されると、石灰化が進んで歯石が形成されます。歯石の表面はデコボコしているので歯垢が付きやすく、歯石→歯垢→歯石→歯垢・・・と、どんどん歯石が大きくなっていきます。愛犬の歯の周りにたっぷり付いた茶色の固いものはすべて「歯石」。

歯肉だけでなく、歯周組織(セメント質、セメント質、歯根膜、歯槽骨)が壊れ、「歯周病」となります。
「歯肉炎」と「歯周炎」を合わせた病態が「歯周病」で、以下のような症状が現れるケースが多いです。

歯茎の赤み
口臭がひどくなる
歯茎からの出血
歯がぐらぐらする、抜ける

愛犬に歯周病を作らせないためにも、日々の歯磨きが重要になってきます。
今回は犬の歯周病の怖さ~無麻酔・麻酔あり治療のメリット・デメリット、予防方法をお伝えしていきます。

犬の歯周病によってかかる病気

歯肉炎・歯周病でも軽いうちは、薬や歯磨きなどで治るのですが、進んでしまうと歯が抜け落ちてしまったり、細菌が頬に入り込んで目の下辺りから膿んでしまったり・・・後々の日常生活に支障を来す結果となってしまいます。

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画像引用元:http://peco-japan.com

歯周病は、特に、日頃歯磨きを行っていないわんちゃんや、ウェットフードを常食としているわんちゃんに多く見られます。歯周病による病気は以下のようなものがあります。

くしゃみ・鼻水(歯根部の炎症・感染が鼻腔に穴を開けることによる鼻腔炎)
下顎の骨折(下顎の歯の歯周病が進行すると、下顎の歯槽骨(歯を支える土台)が溶け、徐々に下顎の骨が薄くなり、最終的に骨折するもの)
全身疾患(細菌が全身に回ることによる疾病で、心臓病、細菌性肺炎、腎臓や肝臓への影響も報告されている)

犬歯周病の治療費用

無麻酔での歯石除去を行っている特別な獣医さんもいるので、是非、以下内容を参考に検討してみてください。麻酔での歯垢・歯石除去は6万円前後、無麻酔での歯石除去は数千円~数万円で可能です。
軽度の歯周病の場合、歯垢・歯石除去やルートプレーニング(根面滑沢化)により歯を清潔に保つ治療で治すことができます。軽度とはいっても、歯垢・歯石取りは大がかりな作業となるため、ほとんどの獣医さんが麻酔を打って行っています。

image03画像引用元:http://plaza.rakuten.co.jp

一方、重度の場合は、炎症組織を取り除くための歯周外科治療が必要となります。たとえ手術をしたとしても、破壊された歯周組織の再生が行われない場合が多く、多くのわんちゃんが抜歯しているのが現状です。
抜歯は歯の状態や麻酔使用の有無によって治療費に差があり、既に歯がぐらぐらの場合は麻酔を使用しない抜歯で1万円程度。まだ歯が元気な場合は麻酔を使用するので、歯1本につき3万円前後の費用がかかるところが多いです。

犬の歯周病の治療方法って?

歯周病の治療方法をまとめると以下の通りです。

ルートプレーニング(根面滑沢化)

歯周ポケット内の歯垢・歯石を除去した後、歯垢を再付着させないように、歯肉に隠れている歯根の表面を滑らかにする施術です。歯垢・歯石除去と一緒に行われるケースがほとんどです。

抜歯

症状がひどい場合は、歯を抜くこともあります。

歯周組織再生療法(EMP療法)

歯周病によって破壊されてしまった歯槽骨などを、歯周組織再生用材料(エムドゲインゲル)を用いて再生を促す治療法です。
歯周病における最新の治療法として注目されているのですが、症例は少ないです。重度の歯周病であっても、少しでも自分の歯を残してあげたい、という飼い主様のご希望に沿える治療法のひとつでもあります。

犬の歯周病治療 無麻酔メリット・デメリット

無麻酔の場合の多くは、診察台の上で犬を固定し、ハンドスケーラーで歯垢・歯石を取り除いていきます。

メリット

■高齢犬や心臓病など、麻酔が命取りとなるわんちゃんでも、治療が可能
■安価

デメリット

■長時間固定されるので、暴れる・咬む・吠えるなどの性格のわんちゃんは治療してもらえない
■歯の裏側や歯周ポケットはスケーリングしてもらえない
■上顎の歯が中心の治療となる
■抜歯不可
■愛犬へのストレスがとても強く、トラウマになるケースもある
■完全には歯垢・歯石を除去できない

犬の歯周病治療 全身麻酔のメリット

少なめの麻酔を打ち、超音波スケーラーを使用して歯垢・歯石を除去します。

メリット

■歯の裏側、歯周ポケットの治療が出来る
■抜歯も出来る
■持病の手術と同時に出来る
■完全に綺麗になる
■表面上は分からない歯の状態が分かるため、その場で突如抜歯ということも可能

デメリット

■麻酔は大きな負担となるため、短頭種、循環器・呼吸・神経・心臓・腎臓・肝臓に持病があるわんちゃんは死亡する恐れもある
■高価
■麻酔による後遺症の可能性がある

犬の歯周病の予防法

手術での歯垢・歯石除去というのは本当に最終手段です。そう何度も繰り返すと愛犬に大きな負担となりますし、ストレスや体への負担から病気にもなりかねません。そのために、日常生活で予防を心がけましょう。

もちろん、予防法は「歯磨き」だけではないので、ご安心ください!歯磨きが嫌いなわんちゃんがほとんどなので、いくつかの方法を組み合わせて日々努力を続けることが、予防の秘訣です。(とはいえ、歯磨きが1番、ダントツで効果があるのは事実ですから、可能であれば、小さい頃から歯磨きに慣れさせることをとてもオススメします)

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日頃から犬のお口周りをチェックしよう

高齢になってしまうと、手術も出来なくなります。手遅れにならないためにも、そして、異常の早期発見のためにも、毎日、愛犬と触れあい、口周りもチェックするようにしましょう。
犬は異常を隠したがる生き物でもありますので、毎日の行動・様子に「あれ?」と思ったら、かかりつけの獣医師さんに相談してみてください。具体的なチェックポイントは以下の通りです。

口臭はないか
よだれが多くないか
頭を振っていないか
硬いものを食られるか
食事中に口から食べ物をこぼすことはないか
食欲はあるか
頬や顎が腫れていないか

チェックは異常を「待つ」という受け身の姿勢です。これからご紹介するのは、異常を「作らない」という攻めの姿勢。

犬にも歯磨きを

歯周病予防に基本中の基本となるのは、そして、1番効果があるのは、「歯磨き」です。
基本的に犬は歯磨きが嫌い、口周りを触られることが嫌いです。いきなり、歯ブラシを突っ込んだら、咬まれることもあるので、慣らすことから始めましょう。
歯ブラシのニオイをかがせる、おいしいものを付けて舐めさせる・・・。歯ブラシのやり方は下の記事をチェックしてください^^

犬の歯のためにドライフードを与える

ウェットフードだと、ドライフードの倍以上、歯に食べカスが張り付くため、歯垢・歯石の原因となります。しかも、噛まないで食べてしまうので、歯や顎も弱ってしまいます。野生の頃は、生肉をガシガシ噛んで歯周病知らずだったといいます。

とはいっても、現代のわんちゃんは、野生の頃から大分進化してしまったので、生肉を与えることは病気の原因にもなるので要注意。
ドッグフードであればドライフードを、おやつであれば固いものを、選んで与えると良いでしょう。
ちなみに、糖分をまったく与えないのもダメです。糖分は脳みその大切な栄養源。不足したら脳みそや神経の病気にかかってしまいますから。

ご褒美や美味しい物を与えつつも、毎日、固い食事を与えることが、健康予防の秘訣です。質の良いドッグフードはこちらの記事をご覧ください。

犬のおやつには歯磨きガムを与える

ドライフードでは、ウェットフードよりスピードが遅いにしても、少しずつ少しずつ歯垢・歯石が蓄積していってしまいます。そのため、並行して与えたいのが歯磨きガム。
歯ブラシよりも高価は薄いものの、放置するよりも大分マシになります!ホームセンターなどの実店舗でも購入することが出来ますが、細菌ではネットでもあらゆる種類の商品が販売されているので、是非、ご検討ください。
歯磨きガム購入の際のポイントは以下の通りです。

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・添加物は入っていないか
・有害物質(骨はBSEなどの病原菌が入っているので危険)が入っているものではないか
・中国産ではないか
・生産国はどこか
・含有食材の産地はどこか
・固すぎないか(愛犬が噛んで歯が折れる可能性もある)
・くさくないか(豚耳、牛皮など、たいがいのガムは匂いが強烈で愛犬が嫌がることもあり、飼い主にとってストレスになることもあります)

 ガムで無添加といえば「牛皮」が多く出回っていますが、こちら匂いますし、産地によってはきちんと滅菌処理がされていないものもあるので、選ばないと危険でもあります。健康で歯にもいいおやつ特集は以下のをご覧ください。

まとめ

犬の歯周病対策でその行方を分けるのが、「予防」と「施術の選択」です。日頃しっかり予防が出来ていれば、歯垢・歯石は蓄積せず、手術をする必要もなくなります。
でも、気が付かないことだってありますよね。その場合は、どの施術を受けるのか正しい選択をして、その後の生活を気を付けることがポイントになってきます。
筆者の愛犬は11才で子宮蓄膿症の手術と一緒に歯垢・歯石除去を行いました。高齢でしたが、血液検査やレントゲン検査などを通し、とても健康体だと判断してもらったためです。
自分1人では選択できませんので、かかりつけの獣医さんやセカンドオピニオンとして別の獣医さんに相談してみると良いと思います。

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