平成28年犬猫殺処分数はどうなってる?全国自治体の取り組みや殺処分件数

犬猫の「殺処分ゼロ」を目指す動きがここ数年、全国各地の自治体やボランティア団体を通じて浸透しはじめてきました。

殺処分減少への取り組みの背景には、空前のペットブームで一部繁殖者や飼い主のモラルに欠ける飼育放棄、深刻な問題が浮き彫りとなった結果、日本国内でも少しずつ動物を愛護する気持ちや関心が高まってきたことがあげられます。

殺処分数を減少させているのは、単に飼育ペットが減少したのではなく、日々精力的に各自治体や動物を保護する団体などが、引き取り、譲渡する活動を地道に続けているからなのです。

自治体では行政だけでなく、ボランティア団体や民間の保護団体と協力しながら、犬猫の引きとりから譲渡、その他にも啓発活動、保護費用捻出のめたふるさと納税を取り入れている自治体もあります。

ビジネスとして、殺処分を減らしていこうという取り組みも様々な形で展開しています。

例えばペットショップで購入する方法以外にSNSの普及で、より自分にあったペットを選べる里親募集のマッチングサイトなどが挙げられます。

猫の殺処分ゼロを目指した、新しい試みで賃貸マンションに猫がついてくるマンションやシェアハウスも出てきています。

着実に前進している殺処分ゼロ活動。

現在行われている取り組みの輪を少しでも広げられるよう、今回は様々な取り組みとそこから見えてきた今後の課題も踏まえてご紹介していきたいと思います。

実際に殺処分に至るまで~

殺処分とは、各地方自治体が運営する動物保健センターが引取った動物を致死させることを言います。

保健センターが動物を引き取る状況は以下の場合のいずれかです。

①正当な理由をもって家庭から引取る場合(飼い主が明確)
②捕獲した動物を一時保護する場合(迷子や捨て犬など)

保護されている犬猫の8割以上が元の所有者が分からないことから、後者の引き取りケースが多いことが推測されます。

センターに引き取られた動物には3つの道しかありません。

飼い主のもとへ戻る(返還)
新しい飼い主を見つける(譲渡)
収容期限を迎え処分される(殺処分)

 

環境省

引取った動物の収容期間は最低2日間とされていますが、上限は各自治体に任せられています。

予算や人員等の制約で1週間程度で殺処分を行うところもあれば、なかには原則殺処分を行わずに収容し続ける保護センターもあります。

殺処分の方法

環境省の「動物の殺処分方法に関する指針」に従い可能な限り「できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法」によって殺処分を行うことが求められています。

現状なされている殺処分の方法は、炭酸ガスによる窒息死や注射による安楽殺などです。

多数の収容動物がいる場合には、コストの問題等から、やむを得なく炭酸ガスを利用せざるを得ない厳しい現状もあります。

引き取る動物の数を減らすことは、殺処分数の減少というだけではなく、殺処分方法の改善にも繋がることです。

殺処分を減らす動きとして国で2012年に動物愛護法の改正が行われたことにより、センターでは安易な理由での引き取りを拒否できるようにもなりました。

犬・猫別引取り数と殺処分率の推移

殺処分率の減少傾向には、行政と民間団体の協力が大きく影響しています。

画像引用元:環境省

保護センターだけでは、施設の規模や予算、引き取り頭数の多さに伴わない人材不足などから、引き取りから譲渡するまでの頭数には限界がありましたが、民間との協力で受け皿を広くすることができました。

画像引用元:環境省

民間の愛護団体と協力することで、可能になったこと

雑種猫♂うに
動物を保護する拠点を、保護センター以外に増やすことができたニャン!
雑種猫♀キキ
譲渡する窓口を増やすことができたニャ
フレブル♂承太郎
啓発活動が自治体だけではなく様々な団体を通して行われることで、一般の目に触れやすく、イベントの機会も増えることで動物愛護の精神意識がさらに高まったワン

結果、センターに引き取られ最終的に殺処分される過程にいかずに保護することができ、譲渡するという仕組みができました。

このような行政と民間団体の協力は、神奈川県や東京都、広島県などで積極的に行われています。

自治体の取り組みとは?

神奈川県動物保護センター

■ボランティア活動への補助支援
■犬や猫を最後まで責任をもって飼ってもらうための啓発活動
■新しい動物保護センター建設中(※新しい保護センター設備プランは以下)
■ボランティアの皆さんが活動しやすい施設
■動物の健康状態に応じて保護できる個室
■保護した犬が元気に駆け回ることができるドッグランなどを整備
■災害時には、被災した負傷動物の保護拠点としても活用

処分するための施設から生かすための施設へを念頭に、ふるさと納税を使っての施設建て替えキャンペーンも現在行われています。

東京都千代田区

■千代田区に住む飼い主のいない猫への助成金などの積極的な取り組み
■「TNTA(Trap, Neuter, Tame, Adopt:一時保護/不妊・去勢手術/人に慣らす/譲渡する)」の実行
■ボランティア団体と区の共同開催による猫の譲渡会実施

平成12年度から延べ約2,500頭以上の手術をボランティアの協力で行い、不幸な猫たちをこれ以上増やさないよう取り組んでいます。

収容期限の近づいた動物の引き取りや、人に馴化させるためのトレーニング、広範にわたる里親探しなど、これまで行政だけでまかなえなかった取り組みは、様々な保護団体を通じて行われています。

今後さらに各自治体で広がりをみせてくることでしょう。

保護活動をビジネスとして行う企業

保護された犬や猫の命が、行政やボランティア団体の地道な努力によって救われている一方で、保護した動物たちの食事や健康管理などの維持費を捻出するのはとても大変なことです。

一人一人の善意がこうした活動の原動力になっていますが、殺処分を根本的に解決しようとするのであればこれらの活動を長く持続させることを考えなければなりません。

想いだけで運営していくのではなく、ビジネスを通じてしっかりと社会貢献をすることに目を向け、真剣に取り組んでいる企業があります。

OMUSUBI

公式サイト:https://omusubi-pet.com/satooya

~事業内容~
■保護犬猫と飼いたい人をつなぐマッチングサービス

■保護団体と提携を結び、間に入ることで円滑で安心な譲渡を行うことができる

■OMUSUBIを通じて譲渡された犬猫は、一般社団法人「つむぎ」と提携する動物病院やペットサロン、トレーナーなどのサービスを通常よりも安く受けることができる

譲渡が成立すると、ユーザーは保護団体に「譲渡負担金」として団体が指定した金額を支払い。「OMUSUBI(お結び)」はそれに加えて「保護犬猫あんしんパック」の料金として、一律1万円をいただく仕組みを設けています。

あんしんパックの内容は、無料のネット相談や外部サービスの特別クーポン利用、協賛企業からのグッズ提供、そして提携する動物病院やサロンでの割引利用など充実しています。

今後さらに価値を感じられるよう、サービスの拡充は随時行って行く予定で展開しています。

ペットのおうち

公式サイト

~事業内容~

■犬・猫の殺処分ゼロを実現するために2011年7月1日から一般公開。国内最大のペット里親募集サイト

■止むを得ない理由により飼い主が飼育困難となってしまったペット、保護活動者によって保護されているペット、殺処分を控えて保健所に収容されているペットなどの里親募集情報が掲載

■事情によりペットを飼育できなくなった人やペットの保護をしている人と、里親になりたい人が交流できるWEBプラットフォームを提供

■色々な悩みも相談できる気軽さがある

■無料会員登録を行えば、すぐに里親募集情報の投稿、里親申し込み、コミュニティの利用が可能

■掲載されたペットの里親決定累計数(※)が9万頭を突破したことを発表
※退会した会員は含まれず、2017年8月1日現在で439,447人が登録

犬猫を中心に、鳥・小動物・爬虫類・観賞魚など様々なペットの里親募集が行われており、中でも多いのは子猫の里親募集です。

募集数が最も多い子猫でも里親決定率は63%、さらに年齢層が上がるペットにつれて里親が見つかりにくい現状があります。

認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン

公式サイト

~事業内容~

■広島県神石高原町を拠点に、捨て犬や迷い犬の保護・譲渡のほか、保護した犬を「人を助ける犬」である災害救助犬やセラピー犬に育成する活動も行い、様々な現場に派遣

■保護犬事業のほか、トータルでサポートできるよう地域再生事業、災害救助犬育成事業、教育啓発事業を展開

■スタッフがボランティアではなく、職業として活躍できる場を用意

「ワンコの、ワンコによる、ワンコのための楽園」
人と犬が力を合わせて、社会を元気にする 日本初の三位一体モデルを創っています。

犬と愛犬家の理想を叶える施設をつくる
福祉施設への貢献を目指しセラピー犬育成を開始
殺処分ゼロへのチャレンジ

 

中でも殺処分ゼロの取り組みの中には、飼い主のレベル向上も見据えた取り組みが含まれており、飼い主が向上すれば犬の状態も向上し、結果、ペットが身勝手な理由で捨てられることもなくなります。

犬を迎えることについて知識・技術の向上が必要であり、それを適切に指導できる人が必要であることから、ピースワンコジャパンは大切な役割を担っています。

NPO法人東京キャットガーディアン

公式サイト

■大塚の猫カフェ型開放型シェルターを拠点に、猫の殺処分ゼロを目指し、 保護センターなどから猫を引取り、飼育希望の方に譲渡する活動並びに地域猫活動を行う

■賃貸マンションに猫がついてくる「猫付きマンション」や、キャットフードや猫砂など日常のお買い物で保護活動に参加出来る仕組みの「ShippoTV」 の運営

■地域猫不妊去勢手術専門の動物病院運営

しっぽ不動産の運営

猫付きマンションとは

色々なケースがありますが、飼育を希望される方は面談の上、所有権ではなく一時保護の場所として東京キャットガーディアンの猫を選ぶことができます。

「猫との生活を夢みている!」御入居者さん

「マンション経営で猫の助けになりたい!」大家さん

「成猫の保護場所を作って沢山救いたい!」保護団体

の、三者がハッピーになれるシステムです。

猫付きシェアハウスとは

高齢者のペット問題や、多頭飼育崩壊などで行き場を無くした成猫が多数います。

子猫に比べて里親の見つかりにくい成猫たちをレスキューできる場所として、1つの場所が出来て、猫達がグループで暮らします。

シェアハウスを卒業して行く方達は、希望して下さる方がいれば(審査の上)譲渡も可能です。

空いた場所には、また新しい子が入ります。

殺処分数を減らす新たな方法のひとつとして、シェルターのように回転して行く場所を作っていきます。

猫の殺処分は、他の動物を大きく上回ります。

犬の保護飼育には広大な土地を必要とするのと、活動拠点が東京から広がっているため、東京キャットガーディアンは猫に特化した活動をしています。

人々の意識が殺処分を減らしていく

ここまで減少した要因は、殺処分の道を回避してくれるボランティアや保護団体、企業の支えがあってこその結果です。

殺処分を回避する取り組みは、さらに全国各地に形を変えてより良く活動を広げていくことでしょう。

ペット先進国と呼ばれているドイツなどでは、基本的には「殺処分をしてはならない」とされていますが、ペットを受け入れる方法は「ブリーダーから直接購入する」もしくは「里親となり引き取る」方法が一般的です。

これまでの日本はペットショップでの購入がほとんどでしたが、最近ではブリーダーによるマッチングサイトや、里親サイトも充実してきました。

保護時は成猫・成犬も視野にいれよう

日本は仔犬や仔猫のころから飼うことがとても人気で、成犬から飼うという考えは、初めてペットを迎え入れようと思ったときには選択肢にあがることは少ないのが現状です。

一方他国のペット先進国では、仔犬でも成犬でも家族として迎え入れることに大きな差はなく、仔犬か成犬かはあまり関係ありません。

成犬を家族として迎え入れることへの選択肢が、ごく当たり前になることも今後の課題です。

著者は生後数日の子猫を、たまたま保護し育てたことがあるのでよく分かりますが、子猫は育てるの大変(゚д゚)!です。

まず1歳過ぎるまでは昼夜問わず大運動会で、性格も赤ちゃんのときには判断しづらく、自分に合う子なのか見極めるのは困難です。

仕事が忙しい方や、落ち着いている猫・犬を望む方は、成猫・成犬の方がおすすめですし、なにより性格にブレがないので安心感があります。

個人的に思う「殺処分がなくならない理由」

ペット先進国のEU圏のように、生体販売の禁止と個人の繁殖禁止を法律化し、生体そのものの絶対数を減らさなければ殺処分はなくならないと思っています。

そのためには去勢・避妊の手術は必ず行い、よく聞くのが「メスに産まれたからには母の経験をさせたい」といいあえて妊娠させる飼い主もいますが、産ませた子供を里子に出すのであれば絶対やめましょう。

産ませなかった頭数分お外で生活している子達が救われ、殺処分数が減ることにつながります。

ペット繁殖業者の実態を知れば、ペットショップで命を購入しようとはとてもじゃないけど思えません。

みんなが実態を知っていくことが大事だと思います。

まとめ

著者がサロンに勤めていたころ、店内の首輪やリード、キャリーなどを小型犬から中型・大型犬サイズまであるだけ全部買い占めたお客さんがいました。

理由を聞くとピースワンコジャパンに支援物資をするためということでした。
そのときはじめて夢之丞(ゆめのすけ)君のことを知りました。

常時、何百頭もいる保護犬や猫を健康健全に飼育管理するには、沢山の労力といろいろなかたちの支援を継続的に必要とします。

保護されたペットたちが、1頭でも多く引き取られ新しい生活を迎える事ができるようにボランティアでシャンプーをし、その子のかわいらしさを引き出すカットをしてあげること。

譲渡されたあとにまた同じことが繰り返されることがないように、ずっとそばで愛されるよう、保護期間中にトレーニングをしてあげること。

家族として迎え入れた以上は、愛情を最後まで注ぐこと。

ペットと呼ばれる動物たちが、その子のさいごの日まで当たり前に幸せを感じられるような世の中になるよう、私たちも改めてこの問題に向き合わなければなりません。

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