仔犬だった愛犬も、気がつけばあっという間に飼い主の年齢を追い越してしまいますね。
近年、動物の医療も発達し、犬用フードも品質向上し、犬の寿命も長くなり高齢化が進んでいます。
長生きしてくれることはとても嬉しいですが、人間同様に高齢化が進むと認知症も増加していきます。
元気なうちはあまり考えたくないことですが、認知症について知っておくことで、ちょっとした異変での早期発見や予防が可能になります。
この記事が愛犬の認知症を考える機会になってくれると嬉しいです。
犬の認知症とは
犬の認知症とは、一度発達した脳細胞が減少し、かつてはできていた行動ができなくなってしまった状態を言います。
認知症は痴呆、または認知障害症候群とも呼ばれます。
認知症は、わんちゃんの老化や脳の萎縮などが原因で起こります。
脳細胞に関する病気ですが、未だに不明な部分も多いのが現実です。
人間と同様に、犬も高齢になるとともに発症しやすくなります。
早ければ12~13歳から始まり、20歳以上になっても発症しない犬もいます。
犬の認知症は早期発見が大事
愛犬が年齢を重ねると「高齢だから仕方ない」と思うことも多々あると思いますが、その行動の変化は認知症の症状かもしれないと疑うことは重要です。
認知症になっても治るわけじゃないから病院へ連れて行かないと考える方もいるかもしれませんが、早めの対処はとても大切なんです。
初期の段階で分かれば、加齢に伴う脳の変化と行動の異常をコントロールでき、症状の進行を遅らせることが可能になります。
飼主さんと愛犬が一緒に過ごせる時間を長くさせることができるのです。
犬の認知症の症状
認知症の典型的な症状をいくつかご紹介します。
犬の認知症の症状には個体差があり、全ての症状があらわれる訳ではありませんし、紹介しなかったような症状があらわれる場合もあります。
いつもと違う様子が見られる場合は、動物病院で相談してみましょう。
認知症の初期症状
初期の段階では、もう高齢だから…と自己判断してしまう飼い主さんは多いかもしれません。
- 食欲の低下、または異常な増加
- 耳が遠くなり、呼んでも反応しない
- 視力の低下
- 足元がふらつく
- ちょっとしたことに恐がるようになる
- 甘えん坊になる
などの変化がみられるようです。
認知症が進行したときの症状
- ボーッとしている
- 壁や空中を眺めている
- 好きなオモチャや遊びに興味を示さなくなる
- 夜中に活動的になり、昼夜が逆転する
- 変な声で鳴き続ける
- 部屋の中をグルグルと回り続ける
- ぶつかっても止まれず、壁や部屋の角で動けなくなる
- トイレの場所が分からなくなる
- トイレ以外の場所で排泄をしてしまう
- 寝た状態でおもらしをしてしまう
- 威嚇や咬みつきなど攻撃的になる
- 慣れている散歩道や帰り道が分からなくなる
- 部屋の中も迷子になる
- マテやオスワリなどの指示が分からなくなる
などの症状がみられるようになります。
認知症になりやすい犬種
どの犬種でも見られますが、柴犬などの日本犬や日本系の雑種は認知症になる確率が高い傾向にあります。
飼い主さんの予防ケアや早期発見が必要となります。
犬が認知症になったら…
認知症と診断されたら、その進行レベルや現在の犬の状態についてきちんと把握しましょう。
犬の個性や性格、これまでどのように生きてきたかによっても対処法は異なります。強いストレスを感じると、病状が悪化してしまうので、犬に合わせた生活をサポートしましょう。
止まない夜鳴きや問題行動などが頻繁に起こると、飼い主さん自身が追い詰められてしまう可能性もあります。
昼夜逆転になり夜鳴きがひどい場合などは、動物病院で睡眠薬に近い薬を処方してもらうこともできます。
初期症状の服用や薬に依存しすぎると、眠りが深くなりすぎてなかなか起きれなかったり、それ以外の痴呆の症状が悪化してしまうこともありますので、獣医さんに相談し納得したうえで使用してください。
犬の認知症の対策
痴呆に効果的なサプリメント
痴呆には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が効果的とされています。
DHA、EPAは海水魚の魚油に多く含まれる脂肪酸で、犬自身は体内で合成することはできません。
サプリメントや老齢犬用の療法食を活用して、適度に摂取させてあげましょう。
これらの脂肪酸は酸化しやすいため、ビタミンCやビタミンE、βカロチンと共に摂取すると効率よく吸収されます。
サプリメントでは、メイベットDCという製品が唯一の認知症専用のサプリメントとして知られています。
DHA・EPAは、皮膚や被毛、関節、心臓および腎臓にも効果的とされ、様々なサプリメントが販売されています。
効果がでるには1~2か月、もしくはそれ以上かかるので、長期間の服用が必要です。
ストレス軽減のためのサウンドセラピー
また最近では、犬のストレス軽減のためのサウンドセラピーも注目されています。
現在音楽の主流は440Hzですが、交感神経が刺激され興奮状態になりやすいといわれています。
一方528Hzの音楽は自立神経を整え、リラックス効果があるとされ、2018年春犬専門のサウンドセラピーCDが世界で初めて誕生しました。
獣医師監修で、528Hzの周波数の音楽を聴かせることにより、わんちゃんの呼吸数・心拍数が整い、ストレスホルモンが下がることが分かっています。
犬の認知症予防
認知症は一度なってしまうと、介護の負担も大きく完治も難しい病気です。
出来るだけ予防をして、元気に長生きしてもらいたいですよね。
予防する為には、脳の活性化、自律神経を整えることが有効です。
具体的な予防法をご紹介します。
散歩など生活に刺激を与える
脳に刺激を与える事は、脳の活性化につながります。
毎日が単調にならないように、散歩ルートをたまには変えてみたり、新しい遊びやオモチャで楽しむのもいいですね。
オテ、マテ以外にも新しい技に挑戦するのもとても刺激になります。
コミュニケーションをしっかりとる
コミュニケーション不足の犬は認知症になりやすいそうです。
スキンシップや声かけなど、愛犬と飼い主さんがしっかり触れ合う事が大切です。
マッサージをすると、全身の健康チェックも出来るのでオススメです。
また、犬は起きた時によく前足を伸ばして大きなあくびをしたりします。これは一種のストレッチなのですが、高齢になるとやらなくなってしまいます。
出掛ける前に足や背中などを軽くなでてマッサージをしてあげましょう。特に冬場などはケガの防止につながります。
バランスの良い食事を与える
ビタミンE、ビタミンB、オメガ脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、EPA、DHA)などは、認知症予防に効果が期待できます。
栄養素のバランスに注意しながら、しっかり与えたいですね。
規則正しい生活
起床時間や食事のタイミング、散歩の時間、睡眠時間など、生活のリズムを一定に保つ事が健康的な生活の第一歩です。
犬自身のタイミングに合わせた生活が、重要なポイントとなります。
早期発見や早期治療
認知症は特効薬がないので、進行すると後戻り出来ません。
早期の発見するためにも愛犬の様子を日ごろからよく観察し、定期検査をすることで認知症以外の病気にも早く気付くことができます。
認知症の犬と生活していくには
一度認知症になってしまったワンちゃんは、サプリメントやリハビリによって多少の改善が見られても、完治することは難しいでしょう。
愛犬をよく観察し、できる事とできない事を理解してあげましょう。
普段生活している環境に危険があるようなら取り除き、場合によっては飼育スペースを狭くしてあげると落ち着くこともあります。
寝たきりになってしまったら、こまめに排泄や給水をしてあげるようにし、体の大きい子であれば体位を変えたり低反発マットを使って床ずれを予防しましょう。
犬用のおむつも役立ちます。
定期的に体をすみずみまで触って、褥瘡やむくみがないか調べてあげてください。
インターネットで検索すると、様々な犬用の介護用品がでていますので、調べてみても良いかもしれません。
犬の介護はとても大変なこともありますが、飼い主さん自身が疲れたりイライラすると、愛犬にも伝わります。
飼い主さん自身が追い詰められてしまわないように、無理のない範囲でできることをしてあげましょう。
一人で抱え込まず周囲の人々に頼れるようにしておく環境がつくれると安心ですね。
愛犬と健康で長く一緒に過ごせるように…
愛犬には健康で長生きしてもらいたいと飼い主さんは願いますが、長生きなほどこの病気にかかりやすくなります。
全ての犬がなる訳ではありませんが、認知症になってしまうと、飼い主さんは介護に大きな負担になってしまいます。
私の実家の愛犬も高齢になり、夜鳴きや部屋の壁にぶつかってしまったりグルグル回るように歩いたりしていました。介護している母も日ごとに疲れを見せ、獣医さんから睡眠薬を薦められ、夜は眠れるようになったようです。
完璧な介護をすることはとても難しいですが、獣医さんに相談しつつ、上手に認知症と付き合いながら生活していくことは可能です。
また昔よりも犬の認知症についての情報も増え、予防策もあります。
愛犬の健康寿命を延ばし、長く一緒に過ごせるように日頃からしっかりスキンシップやコミュニケーションをとり、異変にどれだけ早く気付けるかが大切です。