「ペットを売らないペットショップ」を知っていますか。

日本で犬や猫を飼いたいなと考えたら、まずは気軽にペットショップに足を運ぶのが一般的だと思います。

以前に比べて、犬や猫の負担を考えてペットも販売されるようになりました。

生後56日未満の子犬や子猫のペットとしての販売が原則禁止、展示時間は午後8時までなど法律で改正されてきました。

しかし、日本はまだまだ動物愛護に遅れをとっているようです。

「ペットショップにペットが並ばないことが当たり前」の国もあり、日本国内でも少しずつそのような活動が広がっているのをご存知でしょうか。

生体販売しているペットショップの問題点

可愛い子犬や子猫は一番の売り時期になります。

「小さくて可愛い」「このくらいの大きさだったら家でも飼えるかもしれない」「小さい頃から飼えば長く一緒に過ごせる」と思うお客さんが多く、ほとんどが成犬前に販売させます。

しかし、なかなか売れない子は日に日に大きく成長していき、ますます販売機会が失われていくため、大型店では多くの人に見てもらえるように違う店舗に移動させることもあります。

国内で販売された犬猫の約3%相当の約25,000頭は流通過程で死んでいるのが現実です。まだ小さな体での多くの移動は負担になるうえ、ぞんざいに扱われているケースも少なくありません。

子犬子猫の時期が過ぎると、価格を大幅に下げ販売します。しかしそれでも売れない場合は、ペットショップによっていくつかの方法がとられます。

  • 愛護団体などと協力して譲渡会などで里親を探す
  • 繁殖業者に引き渡す
  • 実験用
  • 保健所に連れて行く
  • 引き取り屋に引き取ってもらう

2013年の動物愛護法の改正で「保健所はペットショップの売れ残りの引き取りを拒否できる」ようになったのです。その結果、保健所の引き取り件数、殺処分数も減りました。

しかし、個人を装い保健所へ持ちこむ場合もあるといいます。

そこで有料で売れ残ったペットを引き取る「引き取り屋」というビジネスが広がっています。

引き取り屋はペットたちを一生面倒見るということにはなっていますが、悪質な引き取り屋も存在します。

悪環境の狭い場所にペットを閉じ込め、ひどい場合は餌もあげず餓死や病死させるのです。

表に出ている殺処分件数が減少していても、闇処分されているペットたちは後を絶ちません。

また、売れ筋の人気犬種猫種があるため、ブリーダーも人気の種類の犬猫を多く繁殖させます。親犬親猫を多く抱えるとその分飼育費用もかかるため、なるべく少ない数で多くの子を産ませるために、何度も妊娠出産を繰り返させる悪質なブリーダーもいるのです。

また障害を抱えていたり、大きすぎる小さすぎるという理由で店頭にすら並ばない犬猫たちがいることも忘れてはいけません。

日常的にペットショップで多くの子犬子猫から選んで買えるという環境の裏には、こうした多くペットたちの命が犠牲になっているのです。

世界の「生体販売しないペットショップ」

ペット先進国と言われるイギリスやドイツ、スウェーデンのペットショップでは、犬や猫を見かけることはほとんどないようです。

生体販売を行なうには厳しい条件をクリアしなくてはなりません。実際にその条件をクリアしたとしても、利益を出すのも非常に難しいようです。

ペットを飼いたい人は、ブリーダーを自分で探したり、保護動物を引き取ったり譲ってもらったりという方法が一般的なのです。

ブリーダーから譲り受ける場合でも、ある程度の期間は母犬のそばで健康的に育てて、ブリーダーと相談して時期を十分に見極めたうえで購入します。

アメリカでも生体販売をしているペットショップの数が急激に減ってきています。

カリフォルニア州では、2019年1月に「ペットショップで販売できるのは、アニマルシェルターなどで保護されている犬や猫に限る」という条例が施行されました。

店頭では、動物たちがどこからきたのかという記録の開示も必要です。

アメリカでは、ロサンゼルスやボストン、サンディエゴ、シカゴ、フィラデルフィアなどの都市では既に施行されていましたが、州全体での条例は初めてでした。

日本の「生体販売しないペットショップ」

始まりは岡山県のペットショップでした。

岡山市のペットショップ「シュシュ」がペットの生体販売をやめ、2015年にペットを売らないペットショップが誕生しました。

NPO法人「犬猫愛護会わんぱーく」と連携し、動物愛護センター、保健所で殺処分待ちの犬を引き取り、新しい飼い主を探しています。

ペットフードやグッズの販売、関連グッズの通信販売、トリミングなどから利益を出し、「里親探しコーナー」で無料で譲渡しています。

1週間のトライアルや数回の面談、いくつかの条件があり、新しい飼い主さんが決定します。

この活動に共感、応援してくれる人も多く、ペットを販売しなくても売り上げは毎年伸びているといいます。

シュシュの「生体販売しないペットショップ」の活動が、徐々に広がりを見せています。

沖縄県北谷町「オム・ファム」や新潟市「ペッツアベニュー スマイルワン」、千葉「アニマルライフ」などがあります。

どのペットショップもペットは売っていません。値段の付いていない新しい飼い主を待っているペットたちの譲渡をしています。

また、イオングループの商業施設を中心に全国200店舗以上で展開する「イオンペット」では全国9カ所で「LIFE HOUSE(ライフハウス)」という名前で保護猫・保護犬の譲渡をする施設を運営しています。

さらに、「島忠」では2020年より、与野店、浦和南店においてのペット陳列販売を廃止しました。

島忠では地域のお客様にペットとの素敵な時間をお過ごしいただくためペットショップを通じて動物との出会いの場を提供してきました。

しかし、私たちが暮らす地域には、さまざまな理由で家族と一緒に暮らすことができない『保護動物』たちが存在します。

彼らは毎日保健所や動物保護団体のシェルターで新しい家族が迎えに来てくれることを待ち望んでいます。
そんな彼らの新しい家族探しの場所として、これからはこの場所を新しい出会いの場として提供します。

彼らの未来が悲しいものではなく、明るい明日を見せてあげるために『保護動物たちを迎える』選択肢を提供いたします。

同店では島忠の認可を得たブリーダーを通じての紹介に切り換え、ペットを陳列販売していた店内ケージは保護動物譲渡会の場として月に2~3回実施されています。

一匹でも多くの命が失われないために

責任をもって大事に繁殖させるブリーダーさんもペットショップももちろん沢山あります。しかし残念ながら命あるものと考えずに、商品、モノとしてしか扱わない人がいるのも事実です。

コロナ禍により、生活に癒やしを求めてここ数年ペットを飼う人が増えているようです。

需要が多いと、供給量も増えるのは当然です。

新しいペットを迎えたいなと考えた時に、ペットショップ以外の選択肢があるということを知っているだけでも救われる命があります。

ペットショップ以外では子犬や子猫は飼えないでしょ?実際に見て決められないんでしょ?と思っている人はまだまだ多いようです。

ペットの命を軽く扱う悪質な業者や人をもちろん許せませんが、私たち一般人が知識や認識を高めることもとても大事なことだと思います。

欧米に比べて動物愛護に10年ほど遅れをとっているといわれている日本。

一人ずつの少しの行動は、悲しい思いをする動物たちが一匹でも減ることに繋がるはずです。

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2020.12.25

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