今回は高齢猫を飼育している飼い主さんへ、食事や栄養素に関する情報をまとめました。
肥満にならない食事の方法、水分補給の大切さ、老猫にとってのタンパク質と脂肪分の大切さなどをお伝えします。
脂肪分が最大の敵
猫は生まれながらにして、脂肪分を多く含んでいる動物性の食事を好んで食べます。
これは、遺伝的な素因に基いての嗜好性か、あるいは離乳期に母猫から教えられた食事の習慣に原因しているのかどうかは判明していません。
そして、犬のように炭水化物に対しての嗜好性はあまりありませんから、野菜を多量に含んだ食事や糖分の多い甘みのある食事に対して、特に興味を示すことはありません。
老猫は肥満に注意
老猫になると一日の運動量が減りますから、必然的に食事量も減らすのが通例ですが、稀に食事量が若い時と同じように旺盛な場合は、肥満がこうじて腹部の皮膚や筋肉が垂れ下がっているような姿になります。
肥満のために運動量が減るので、肥満にさらに拍車がかかってしまいます。
7歳と過ぎたら、猫には脂肪の含量の少ない食事を与えるように注意すべきです。
満腹感を得られる食事の与え方
食欲が旺盛な老猫の場合、食事制限だけでは空腹を訴えて食事を一日中要求し続けます。
そんなときは、野菜を細かく刻んで動物食にまぜて、食事全体量を増やして満腹感を与えるようにします。
また、一日分の食事を数回に分けて与えるように心がけることも、空腹感の調整には効果が期待できるようです。
忘れると怖い水分補給
猫は犬に比べて一回に飲む水の量が少ない習性があります。
しかし、絶えず少量の水を飲みながら、身体が必要としている水分の補給につとめています。
体内の水分量が減少して、脱水の心配が生じた際に、犬は自発的に多量の水を飲んで体内の必要水分量を調整することができますが、猫はそれができません。
どんなに体内水分が減少して、脱水が心配になっても、大量の水分を一時に摂取する習性がないために、猫は脱水症状に陥りやすい傾向があります。
ある報告によりますと、「猫は昼夜を問わず規則的に水を飲む習性はあるが、飲水によって4%を超える脱水を速やかに改善する能力はない」と言っています。
水分は食事から摂取
猫は飲み水だけでなく、食事に含まれている水分からも水分を補給しています。
老猫の水分の摂取量が減ってきたときには、乾燥キャットフードではなく、半生フードか缶詰の湿潤フードに切り替えて、水分補給につとめることをオススメします。
ちなみに老猫は、水分摂取量が少ないために排尿量も少なく、尿の濃度が濃くなり、尿臭も強くなります。
猫の年齡が増すごとに水を飲む量が減少し、それによって体内の水分代謝が不調になって、腎臓病や尿路疾患、尿路結石などの疾病を誘発しやすくなります。
水分の調整には、細心の注意をはらってください。
いつも新鮮な水を飲む習慣をつけておきましょう。
老猫は食事量に注意
老猫になるにつれて、猫は食事の味に対して敏感になることをご存知でしょうか。
この性癖は、飼い主からの学習によって体得した習性なのです。
飼い主が食通であればあるほど、この嗜好性は極端にエスカレートしています。
与えられた食事が気に入らなければ、食事の匂いを嗅いだだけでソッポを向いてしまい、2日でも3日でも絶対に食べようとしません。
しかし、それが老猫の健康を守るために絶対に与えなければならない食事である場合には、何としても、猫に食べてもらわなければなりません。
このようなときには、ペット用のかつおぶしなどふりかけをかけたりするといいです。
犬に比べて低い猫の肥満率
老猫になると、食事量は若い時期に比べていく分減るのが普通です。
猫は、食事の摂取量を自分のエネルギー必要量に応じて巧みに調節する習性があるからです。
このため、猫は犬に比べて肥満率が低い傾向があります。
犬の肥満率が20~30%であるのに比べ、猫では6~12%にすぎません。
町で肥満した犬によく出会うのに比べて、肥えた猫を見かけることが少ないのは、このことを如実に物語っているように思います。
老猫は、猫の嗜好をよく考えて、食事の選択や調理をすることをオススメします。
市販のキャットフードを選ぶときでも、老猫に適していて、なおかつあなたの飼い猫の嗜好に合ったフードを選ぶように心がけてください。
避妊&去勢した猫は特に肥満注意
去勢手術や避妊手術を受けた老猫は、一般的に肥満の傾向を示し、15歳を過ぎてもこの傾向は小康状態になることはありません。
困ったことに、肥満が一生続くようです。
これは、手術を受けたために体内のホルモンバランスが変化して、食欲が異常に亢進することが原因のようです。
手術後に肥満が始まったら、食事の内容と与える量を調整して肥満の抑制を図りましょう。
これを放置すると、肥満が原因の慢性疾患を誘発する結果になりますので注意が必要です。
猫と人の食事が同じでいいのか
猫が人と生活をともにしていることで、猫の食事も人の食事とほとんど同じであるという実態が判明しました。
しかし人と猫では、解剖学的に消化管の構造が異なっていて、猫は肉類を食べ、消化して生命を維持するようにできています。
猫は小腸や大腸は、人のように雑穀、野菜、肉、魚類など雑食を消化するのに適していないのです。
それなのに、なぜ猫が人と同じ目メニューの食事で生命の維持ができるのか不思議に思えます。
猫と人との共存生活を考えると、猫は飼い主が見ていないところで必要に応じて、ネズミや昆虫などを補足して動物性蛋白質として食べていたのでしょう。
キャットフードが普及した現代では、猫はタンパク質としてネズミや昆虫を捕まえて食べなくても栄養が足りていますから、ネズミを摂って食べる習慣を忘れてしまいました。
老猫が脂肪分やタンパク質の多い食事を好む理由
老猫が一日に必要とする栄養素は、体重4,5kgの猫で人の5~7倍相当が必要です。
老猫が求める栄養素の必要量が、いかに多いかがうかがえます。
しかし腎不全を発症しちえる老猫にこれほどの高タンパク質を長期間与えると、体内のエネルギーの事故消費を加速させるために尿毒症を誘発して、腎不全の病状を悪化させてしまう心配があります。
腎不全の病状のある老齢猫の食事に関しては、獣医師の指導に従ってください。
腎不全に適した処方食を指示してくれます。
脂肪分は抵抗力低下を予防
老猫に脂肪分を多く含んだ食事を与えますと、喜んで食べて食欲が増進します。
老猫の食事の中に含まれる理想的脂肪分は30~40gで、これはエネルギー供給量の50~60gを占めています。
食べ物の中に含まれている脂肪分が、猫の食性を支配すると言ってもよいくらい、脂肪によって猫の食事に対する嗜好性は改善されます。
このような猫の脂肪に対する食性の体質は、人や犬に比べて膵液が多量に分泌されるために、食事の中の脂肪分が十分に消化吸収されて、体内の新陳代謝に活用されるためです。
脂肪分を老猫の必要量に従って与えていると、精神作用の遅滞、皮膚の乾燥、被毛の劣化、心不全、抗病力の低下などを予防できると動物栄養学者はいっています。
高脂肪食といえば、私達はすぐに牛肉ロースを想像しますが、この牛のロースでさえ、脂肪含量は猫の必要量にはやや不足していると言われます。
老猫の脂肪要求量がいかに大量であるかが理解できます。
老猫に合ったキャットフードの与え方
ドライフードを与える場合は、必ず水の供給を忘れないでください。
ドライフードは、栄養学的には栄養のバランスをよく考えて調整され製造されていますから、毎日与えても問題ありません。
老猫の健康を守るには適切な食事ですが、問題なのはドライフードの水分含量です。
一般的に市販されているドライフードは、水分含量が8%前後です。
老猫は健康状態がよければ、この水分含量で問題ありませんが、痩せ始めて食欲が低下して水を飲む量が減ってきたときには、水分を10%以上含んでいるドライフードに変えることをおすすめします。
水分含量の多いドライフードに変えただけでは、老猫の体内の水分代謝が心配な場合は、必ず飲水の供給を忘れないようにしてください。
水分補給を忘れると、脱水症になったり、尿石症を誘発する心配があります。
老猫が水を飲みたがらないときは
缶詰にドライフードを混ぜてみると効果的です。
猫缶詰は、猫の嗜好をよく考慮にいれて製造されていますから、老猫は喜んでよく食べます。
食欲を満たす面では申し分ありません。
水分の含量が77%で、水を飲みたがらない老猫の水分調整にとっても最適な食事です。
ドライに比べてタンパク質、脂肪、ナトリウム、ビタミンなどの含が少ないことが欠点といえば欠点ですが、もしこのような成分の量の不足が心配でしたら、ドライフードと缶詰を混ぜた調整食を与えることをおすすめします。
まとめ
老猫にとって脂肪分やタンパク質は、抵抗力の低下を防ぐ役割を果たしていたことは知っていましたか。
老猫が健康に長寿を全うするのに、とても大切な栄養素です。
また老猫は水分を摂りたがらなくなる傾向があるので、脱水症状にならないよう気を配りましょう。