愛犬が飼い主さんの顔をペロペロ舐めてきたり、チュッチュッとキスをしてきたり、可愛い愛情表現だな~と喜んじゃいますよね。
起床後、外出から帰ってきた時などに習慣化しているご家庭も少なくないようです。
しかし、この行為…実は気をつけなければならない危険な行為なんです。
今回は愛犬とのキスや顔を舐められることのリスクをお伝えします。
犬がキス、顔舐めする意味
挨拶
犬の先祖のオオカミの野生としての習性が残っているともいわれています。
群れで生活していると、自分の仲間か確認したり、仲間同士の挨拶としてキスをしていた名残だとも考えられています。
飼い主さんなどに親しみを持っているという意味の挨拶です。
愛情表現
キスや顔周りを舐めることは、愛情表現の一つです。
子犬が母犬にごはんを催促する時の行為でもあります。
おねだりしたり、甘えたり、大好きという気持ちを伝えるときにすると考えられています。
気を引く
遊んでほしい、構ってほしい時などにもします。
自分に注意を引きたくて、キスしたり顔周りを舐めることがあります。
匂い
飼い主さんからいい匂い、美味しそうな匂いがする時の行為です。
嗅覚がとても優れている犬には飼い主さんが食べたものの匂いの元を辿ろうとします。美味しそうでたまらないと感じているのかもしれません。
ストレス
実は強い不安や助けてほしいなどストレスを感じているときに、守ってほしいという意味で、口や顔を舐めてくることがあります。
執拗に舐めてくる場合や、同時に耳が後ろに倒れている、尻尾が丸くなっている場合にはストレスが原因だと考えられます。
犬にキス、顔舐めされた時の危険性
犬や猫(脊椎動物)に舐められて感染する感染症があります。
犬猫と人間が共通してかかる「人畜共通感染症」、「人獣共通感染症」、「ズーノーシス」と呼ばれるものです。
頻繁に起こるものではありませんが、感染した場合に重い状態になることも珍しくありません。
レプトスピラ症
細菌「病原性レプトスピラ」に感染する病気です。
ネズミなどの野生哺乳動物の腎臓に保菌し、尿から排出します。そのため、ネズミの尿が溶け込んでいそうな土壌、用水路や水たまりなどから犬が感染します。
犬が感染すると、初期症状として発熱、倦怠感、食欲不振、嘔吐、脱水、出血など。その後、腎不全や肝不全に発展し、治療が遅れれば死に至ることもあります。
犬から人間に感染した場合、潜伏期間が2日~3週間あり、頭痛、発熱、悪感、筋肉痛、吐き気、下痢や腹痛などの風邪のような症状、皮膚に発疹がでる場合もあります。重症になると黄疸、肝障害や腎障害などが起き、死亡することもあります。
人間が感染した場合には、「4類感染症」として保健所に届け出をしなければならない感染症です。
パスツレラ症
パスツレラ属菌による感染症です。年々感染する件数が増加しています。
75%の健康な犬や猫の口の中に保有している常在菌なので、動物には症状は出ません。
しかし人間に感染すると、咳などの呼吸器系症状、腫れや痒みなどの皮膚症状、その他にも膀胱炎、外耳炎、副鼻腔炎、結膜炎等にかかります。
重症化すると、肺炎、敗血症、髄膜炎などを起こすケースも。
カプノサイトファーガカニモルサス症
細菌のカプノサイトファーガカニモルサスによる感染症です。
こちらも犬の口内にいる常在菌です。
人間への潜伏期間は1~8日、症状は発熱や嘔吐、倦怠感、頭痛などです。重症化すると、敗血症、髄膜炎や髄膜炎を起こして死に至ることがあります。
日本では14例中6例が死亡しているという報告も。
サルモネラ症
サルモネラ菌と聞くと食中毒のイメージが強いですが、健康な犬の3~21.5%が保有しているともいわれています。
特にヘビ、トカゲ、カメなどの爬虫類が多く保有している菌なので犬と爬虫類をどちらも飼っている家庭や、散歩中などに犬が爬虫類と触れてしまわないような注意が必要です。
犬も人間も症状としては、一般的に急性胃腸炎として嘔吐、下痢、食欲不振、元気消失などがあります。
ヘイルマンニイ(ハイルマニイ)菌
胃潰瘍や胃炎、胃がんの原因にもなるというピロリ菌の仲間であるヘイルマンニイ(ハイルマニイ)菌です。
発癌性がヘイルマンニイ(ハイルマニイ)菌はピロリ菌の7倍ともいわれている菌ですが、犬や猫ではよく見られます。
そのため、ペットから感染することは珍しくないとされています。
犬にキスや顔舐めをやめさせる方法
飼い主さんはキスされたり、顔を舐められると、可愛いな~と喜んだり嬉しそうな声を出してしまいます。
愛犬は飼い主さんが喜んでいる姿が大好きなので、余計に「キスをすると喜ぶ」とインプットされていくのです。
愛犬がキスしようとしてきたら静かに立ち去る、顔をそむける、無視するなどをして興味ないような行動をしましょう。
その変わりに、愛犬が喜ぶオモチャで遊んであげたり、ブラッシングやお腹を撫でたりたくさんのスキンシップをとってあげましょう。
飼い主さんの毎日のちょっとした行動で、愛犬からのキスは防げます。
また、口に美味しそうな匂いが残る食事直後には愛犬に顔を近づけないようにしましょう。
愛犬とのキスは気をつけて
愛犬とのキスや顔舐めの危険性をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
ショックですよね。飼い主さんは愛犬とのスキンシップや愛情表現のひとつで嬉しい行為なのに、このような危険性があるとは。
特に小さいお子様や高齢者、病気の方などは免疫力が低いため、感染すると重症化しやすいので気をつけて下さい。
このような行為をやめさせるのには、犬よりも飼い主さんの気持ちの方が難しいともいわれています。
寂しいですよね…しかし、愛犬はキスや顔舐め以外にも愛情表現をたくさんしているんですよ。
他の愛情表現で、お互いに安全に暮らして、さらに絆を深めてほしいと思います。