皆さんは、虎毛の野性的な日本犬と聞くと、真っ先にどの犬を思い浮かべるでしょうか?「甲斐犬!」という声が多く聞こえてきそうです。
そのくらい、「虎毛」の犬のイメージとしては定着している甲斐犬ですが、実際に目にする機会が多いかといえば、そうでもないかもしれません。
一部では、扱いにくいという声もちらほら・・・キリっとした風貌と、堅強な肉体、そして日本犬特有の気質などが甲斐犬を、より「強面」に見せているのかも知れません。
しかし、その性質を知り、付き合い方を学ぶことで、甲斐犬の可愛さや意外な一面を知り、その魅力にメロメロになってしまうかも!クールでハンサム、時々(?!)チャーミング、そんな甲斐犬の魅力を掘り下げてみましょう!
甲斐犬ってどんな犬?
甲斐犬は、山梨県が原産の日本犬の一品種です。山梨県は、四方を山に囲まれた地形で、自然の豊かな場所です。
この山岳地帯で、甲斐犬は狩猟犬として発達しました。
厳しい自然の地形で小動物や、雉などの鳥だけではなく、イノシシやカモシカなどの大型の哺乳類の狩りにも使用されてきました。
このような激しい狩猟に耐えるため、甲斐犬は日本犬の中では中型ではありますが、力強さを感じる筋肉質な体と、急傾斜の岩場を駆け回るための独特の飛節等を持つ、動きの機敏な犬です。
甲斐犬の特徴
甲斐犬といえば「虎毛!」と言われるくらい、甲斐犬の特徴としてその毛色に注目が集まりますが、甲斐犬の魅力や特徴は毛色だけではありません。
甲斐犬の性格
どうでしょうか?
性格面では、やはり野性的な狩猟犬という面が大きいかもしれません。
しかし、飼い主さんへの揺るがない忠誠心と真っ直ぐな愛情は、甲斐犬の大きな魅力の一つといえるでしょう。
甲斐犬の体型と色について
甲斐犬は体高50㎝前後、体重15~18㎏前後で、日本犬の中では中型に分類されます。
全体的に筋肉質で水平な背中、よく引き締まって幅広い腰と張った肋、深い胸は力強い野性味を感じさせます。
急傾斜の岩場を猟で移動するため、飛節がよく発達し、跳躍、疾走する能力が高いです。
甲斐犬は「鹿犬型」と「猪犬型」の2タイプあったようですが、現在では鹿犬型と呼ばれる、細身なタイプが多いようです。
甲斐犬の一番の特徴ともいえるその毛色についてです。なぜ、あのような独特の毛色になったのでしょうか?
画像引用元:https://jp.pinterest.com/
これには、甲斐犬が長い間山岳地帯での猟に使われてきたという歴史が関係しています。
普段街中で見るとそれほど感じませんが、甲斐犬のあの美しい虎毛は、雑木林の中では保護色になります。
確かに、こげ茶色は、地面や枯葉の色に近く、薄い茶色は、木漏れ日が林に差す様子によく似ています。
毛色は、黒虎毛、赤虎毛、中虎毛がスタンダードとして認められていますが、その違いは、虎毛部分の色の違いです。
最近では、黒一色の甲斐犬が多くいるようですが、犬種のスタンダードとしては、やはり虎毛がきちんと出ていることが重要視されています。
甲斐犬の寿命
甲斐犬の寿命は、12~16年程度といわれています。
これは、他の中型犬に比べても、やや長生きの傾向にあるといえると思います。
甲斐犬は、日本で生まれ育った犬種なので、日本の気候や風土といった環境によく適応した犬種です。
画像引用元:https://jp.pinterest.com/
猟犬として発達してきた犬種なので、よく運動もこなします。
このようなことから、飼い主さんが、甲斐犬の求める環境を十分に理解して、ストレスや運動不足に気を付けてあげることが、甲斐犬の寿命を延ばしてあげるコツではないでしょうか。
甲斐犬にオススメのドッグフード
犬は基本的に肉食であり、特に甲斐犬は筋肉質で多くの動物性蛋白質を必要とします。
原材料が魚、もしくはお肉がたっぷりと使われているドライフードがおすすめですが、ドッグフード選びで迷ってる方はこちらの記事を参考にしてください。
甲斐犬のトッピングやご褒美におすすめなのが、酵素とタンパク質がたっぷり取れる、馬の生肉です。
ドライフードが主食の現代の犬には、酵素不足と言われています(酵素は生物しか摂れません)。
生肉には酵素がたっぷりと含まれていて、酵素は犬にとって欠かせない栄養素です。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
甲斐犬がなりやすい病気
他の中型犬に比べ、比較的長生きで丈夫な傾向にある甲斐犬ですが、時には病気になってしまうこともあります。
病気になってしまってから慌てないように、甲斐犬が罹りやすい病気や気を付けたいことを知っておくことも大切です。
アレルギー性皮膚炎
これは、環境によるものや特定の食べ物によるものがあります。
もともと日本は湿度が高く、皮膚トラブルを起こす犬は少なくありません。また、ハウスダストや特定の草花、食物にアレルギーを示す場合もあります。
また、アレルギー体質は遺伝することがありますので、お家の甲斐犬にアレルギーが出たら、その子の親や兄弟など、血縁の甲斐犬の飼い主さんと情報共有を計り、繁殖を計画している場合などは、一度立ち止まり、よく考えるということも甲斐犬という犬種を守る上では必要な事ではないでしょうか。
皮膚病にかかったときには、使用しているベッドや部屋中を、清潔に保つ必要があります。
毎日ペッドなどを洗濯するわけにもいかないので、そんなときはペットが舐めても安心の、消臭&除菌ができるおすすめのスプレーがあります。
飼育時の臭いにも効き目があるので、私もそうですがペット飼育者は重宝すると思います。こちらの記事を参考にしてください。
耳のトラブル
垂れ耳の犬に多いといわれている耳のトラブルですが、立ち耳の甲斐犬にも起こることがあります。これは、耳の中に毛が密集して生えている場合によく見られます。
耳の中という狭いスペースに、毛が密集して生えることで通気が悪くなってしまい、細菌が繁殖することで起こります。
このような状態になると、甲斐犬は耳を痒がるようになり、頻繁に足で耳を掻き、頭を振るようになります。
酷くなると掻き壊してしまい、耳を触ると痛がったり、耳が熱を持ったり、頭を振った時に膿が飛んだりするようになります。
酷くしてしまうと、治療に時間がかかりますし、耳を触られることに恐怖心を持つようになってしまい、その後の耳のお手入れなどで苦労することになってしまいます。
普段からよく観察し、甲斐犬の耳が臭うなと感じたり、最近よく耳を掻いているなと感じた場合には、出来るだけ早く動物病院に連れて行ってあげることが大切です。
甲斐犬のおおよその販売価格
甲斐犬はペットショップで見かけることはあまりなく、ブリーダーから購入するケースが多いようです。
この価格は、ペットショップやブリーダーが独自に決めている場合が多く、高価=良い犬であるとは限りません。
しかし、あまりに低価格の甲斐犬の場合には、健康上で不安があったり、甲斐犬としての特徴がいまいちであったりという場合もあるので、注意が必要です。
ペットショップ、ブリーダーのどちらで購入する場合でも、一度で決めてしまうことはせずに、色々な犬舎を見学させてもらい、ブリーダーから直接話を聞く、甲斐犬の展覧会を観に行くなどして、情報を集めると良いと思います。
甲斐犬子犬の育て方
ではいざ甲斐犬の子犬と暮らすことになったら、一体どのように育てたらいいのでしょうか。
目の前にいる、黒くてもこもこした、つぶらな瞳の愛くるしい甲斐犬の子犬。
何をしても許してあげたくなってしまう、可愛さがあります。でも、そこはやはりお互いに気持ちよく暮らすために、必要なルールは是非覚えて欲しいもの。
甲斐犬は飼い主以外に懐きにくく、警戒心が強い
と、いわれている犬種です。猟犬として暮らしている場合は、そういった特性が必要な場面も多々あるでしょうけれど、一般家庭で家庭犬として過ごす場合には、この気質に大いに悩まされる可能性があります。
それを防ぐためには、子犬の頃からしっかりと社会化やしつけを行うことが必要不可欠です。
子犬の社会化の臨界期といわれている生後4か月前までに、様々な経験をさせることが大切です。
この時期までに、出来るだけ多くの人や犬、他の動物や音、色々なものに触れることで、子犬はその存在をその後も受け入れやすくなるといわれています。
逆にいうと、この短い期間に経験できなかったことについては、恐怖心を持ちやすくなってしまったり、受け入れにくくなってしまったりするということです。
画像引用元:https://jp.pinterest.com/
特に、甲斐犬は他者への警戒心が強く、時には、その警戒心が攻撃行動につながることもある犬種です。
この時期の過ごさせ方がとても重要になり、甲斐犬の一生を左右するといっても過言ではありません。
しかし、生後2~3ヶ月の間というのは、ワクチン接種の時期でもあります。この時期の子犬は母犬からの移行免疫が消え、その代わりとなる免疫をワクチンで補うという非常にデリケートな時期でもあります。
そのため、お散歩に制限があったり、お出掛けに制限があったりと、飼い主さんも悩んでしまうのではないでしょうか。
そのような場合は、お散歩では無理に歩かせず、抱っこをして車の音、サイレンの音、行き交う人や他の犬、猫などの姿を見せてあげたり、動物病院やドッグトレーニングスクールで行われている、同じ位の子犬たちが集まるパピークラスに積極的に参加するようにしてみたらどうでしょう。
そのような場所に出掛けることで、他の飼い主さん達とコミュニケーションが取れたり、飼育の悩みを相談し合ったりできますので、飼い主さんにとっても有益です。
甲斐犬の子犬のしつけ方
独立心が強く、猟犬としての歴史を持つ甲斐犬は、子犬の頃のしつけがとても大切です。まずは、飼い主さんとの信頼関係を作るということから始めます。
これには、「服従訓練」が必要です。「服従」なんていうと、ちょっと厳しいイメージですが、決してそんなことはなく、「お互いの立場をきちんとわきまえましょう」ということを教えてあげるということです。
画像引用元:https://jp.pinterest.com/
飼い主さんは、甲斐犬にとって保護者であり、見習うべき群れのリーダーです。大きな気持ちで、新しい家族との関係を築きましょう。
例えば、犬にとっての服従の姿勢である「伏せ」を教える際には、子犬が自ら伏せるタイミングで「伏せて」などの号令をかけます。そして、子犬が伏せた状態になったら、大げさなくらいによく褒めます。
子犬は叱るよりも褒める
これは、しつけ全般に言えることですが、「叱る」しつけはタイミングが非常に難しく、また、子犬にとってなぜ叱られているのか理解できない場合に、飼い主さんに対して不信感を持ってしまったり、学ぶことへのモチベーションが下がってしまったりするからです。
甲斐犬の子犬のしつけについて、とても大切なのは「褒める」ことです。
子犬が望ましい行動をしたときには、子犬を驚かさない程度にオーバーに褒めます。褒めるタイミングは、望ましい行動をしている最中です。
手を上げるなどの体罰を用いたしつけは、甲斐犬に「力でねじ伏せる」という方法を教えてしまうことになりかねず、結果として甲斐犬の攻撃性を助長することに繋がる危険性もあります。
しつけに関しては、難しいと感じたら無理をせず、専門家やブリーダーに意見を求めることも必要です。
家庭内でルールを明確化し、家族全員が一貫性を持って子犬のしつけに関わるようにしましょう。
甲斐犬を吠えない子にしつける方法
甲斐犬は、もともと無駄吠えの多い犬種ではありません。
そんな甲斐犬が吠えるということは、何かしらの原因があるはずです。まずは、何が原因で吠えているのか、甲斐犬の目線で探ることが必要です。
これで、吠える原因が見つかったら、その原因をできるだけ取り除いてあげるか、その原因に慣らす訓練をしましょう。
甲斐犬は、吠えやすい犬種ではありませんが、警戒心は強いです。ですので、知らない人、聞きなれない音には敏感に反応することもあるでしょう。
これを防ぐためには、子犬の時期から様々な音に慣れさせておく必要があります。
花火や、インターホン、他の犬の鳴き声、バイクや車の音、人の足音などを繰り返し聞かせ、その度に「この音がしても怖いことは起こらない」と学習させることが必要です。
甲斐犬と柴犬のちがい
甲斐犬と柴犬、どちらも日本の中型犬です。
甲斐犬と柴犬はどんなところにちがいがあるのでしょうか?まずは体の大きさですが、甲斐犬が体高50㎝前後であるのに対して、柴犬は体高38㎝前後と小柄です。
また甲斐犬の特徴的な虎毛は、柴犬では非常に珍しく、見る機会は少ないでしょう。
どちらも猟犬としての歴史を持ちますが、甲斐犬がイノシシやカモシカなどの大型哺乳類の狩りに使用されていたのに対し、柴犬はウサギ等の小型哺乳類や山鳥を狩る際に用いられました。
まとめ
ペットショップで見かけることがほとんどない、ちょっと珍しい虎毛の日本犬。
野性味を残すその風貌さながら、性質的にも決して一般的に「飼いやすい」犬種ではありません。しかし、飼い主さんを一途に思ってくれるその眼差しには、まるで侍のような潔さを感じます。
丈夫な体と強い精神力、機敏で運動神経抜群な甲斐犬は、彼らの特徴をきちんと理解して向き合えば、とても魅力的な犬種であるといえるでしょう。