平成28年度の全国での犬猫の殺処分数は55,998頭に上りました。
これは平成16年度の殺処分数394,799頭と比較し大きく減少しているものの、5万頭以上の犬猫がたった1年でその命の灯を吹き消されていると思うと、到底少ない数とは言えません。
こうした現状から今、様々なボランティア団体や行政が譲渡会などのイベントを実施するなど殺処分ゼロを目指すさまざまな取り組みを各地で行っています。
そしてついに平成25年度、神奈川県動物保護センターでは犬の殺処分がゼロとなり、さらに平成26年度には、猫の殺処分もゼロとなりました。
今回はそんな神奈川県の、熱心な動物愛護活動をまとめました。
ペットとの生活を望む人
2017年10月、一般社団法人ペットフード協会が行っている犬猫の飼育実態調査によると、20~70代の全国の犬の飼育頭数は約8,920千頭、猫の飼育頭数は約 9,526千頭にのぼると推計されています。
また犬の飼育頭数は2013年より減少傾向にあり、近年の猫カフェブームの影響か、猫の飼育数が犬の飼育数を大きく上回る結果となりました。
さらに、今後の飼育以降に関する調査では、今は犬を飼っていないが、今後飼いたいと思っている人が65.9%、今は猫を飼っていないが、今後飼いたいと思っている人が50.7%と、犬猫との暮らしを望む人が半数を上回ることがわかりました。
神奈川県殺処分0達成の取り組み
そんな中、神奈川県では平成25年に犬の殺処分ゼロ、翌年には猫の殺処分ゼロを達成しました。
神奈川県に動物保護センターが設置されたのは1972年のこと。
設置当初は「犬管理センター」と呼ばれていました。
この時代は、年に100万頭をも超える犬が全国の保健所に収容されており、そうしたすべての犬たちに新しい居場所を見つけてあげることは不可能で、殺処分という形をとらざるを得ない状況が続いていました。
こうした現状を変えようと、神奈川県では1頭でも多くの犬を救おうという取り組みをはじめ、子犬を譲渡する制度をスタート。
こうした努力が40年後の2013年、都道府県としては初の犬の殺処分ゼロを達成し、実を結ぶこととなりました。
28年の譲渡件数
最新の平成28年度の報告では、神奈川県での犬の譲渡数は169頭、猫の譲渡数は571頭となりました。
また、神奈川県では多頭飼育崩壊を防ぐため、譲渡する犬猫の全てに避妊去勢手術を実施、マイクロチップの装着を行っています。
譲渡前、譲渡後で犬猫の講習会を行うなど、譲渡後の犬猫が幸せに暮らせるような取り組みも行っています。
また県民だけでなく、新たな飼い主を探す取り組みをしているボランティア団体にも譲渡を行い、よりたくさんの犬猫に新しい居場所を見つけてあげられるよう取り組んでいます。
殺処分0に貢献しているボランティア団体
KANAGAWA DOG PROTECTION(以下 KDPと略)では、神奈川県動物愛護センターから犬を引き取り、新しい居場所をみつけるまで健全な環境で飼育をし、命をつなげる活動を行っています。
現在は手作りのシェルターで70頭ほどの犬が生活していますが、神奈川県が殺処分ゼロを達成した平成25年、その数は倍の130頭であったといいます。
ここでは小型犬など、一般的に引き取られやすい傾向にある犬種ではなく、殺処分対象になりやすい犬を選んで保護しています。
KDP代表の菊池さんの目標は、「KDPが一刻も早く潰れる」こと。
そのために殺処分ゼロを目指し、捨てられた保護犬を家族に迎え入れようという意識を一般常識のレベルに達せられるよう、レスキューや譲渡もとても大切なことですが、人と犬が本当の意味で安心して暮らせる世の中にするべく活動をしています。
殺処分0の落とし穴
殺処分ゼロという素晴らしい成果の裏に、“ゼロ”という数字を追いかけるあまり、“安楽死”を人の手で行えずに、苦しんで死んでいく犬もいるという事実があることも見逃せません。
数字を追いかけるあまり、こうした犬たちを楽にさせてあげることができなくなってしまいます。
病気で起き上がる元気もない犬。床ずれしてしまい、蛆が沸いてしまっている犬。
飼い主のいない(細やかな世話が不可能)な犬たちのそんな状況を見ても、果たして本当に“安楽死”をしないことが正解なのでしょうか。
“殺処分0”いうのは、これはこれで人間のエゴを押し付けているように思います。
KDPへの寄付先
KDPで暮らしている犬たちには、医療費や食費が必要です。
また今後保護する犬たちの搬送費など、さまざまな費用がかかります。
少しでも多くの犬たちに幸せな暖かい居場所を見つけられるよう、応援してみませんか。
その他ドッグフードやペットシートをはじめとした物資の寄付も募っていますが、その時によって必要な物は変わってくるので、上記のURLよりご確認ください。
ふるさと納税で愛護活動に寄付できる
豪華な返礼品が話題を集めるふるさと納税。
このふるさと納税が、動物愛護にも役立つことを知っていますか。
神奈川県川崎市ではふるさと納税で寄付を募り、保護センターにいる動物たちへのフードや飼育環境の充実、譲渡事業に充てる取り組みをしています。
平成29年度には総額11,047,297円もの寄付が集まり、フードやタオルなどの物品の寄付も187件集まりました。
納税方法
下記の連絡先に問い合わせると、後日納付書が送付されます。
住所 | 〒213-0025 川崎市高津区蟹ヶ谷119番地 |
電話 | 044-766-2237 |
FAX | 044-798-2743 |
メール | 40dobutu@city.kawasaki.jp |
ふるさと納税を利用し、川崎市など地方公共団体に対する寄附を行った場合に、その支出した寄附金のうち2千円を越える額について、個人住民税と所得税の寄附金控除の適用を受けることができます。
納税をしながら川崎市の取り組みを応援してみませんか。
集まったお金で新センター設立
また、神奈川県の動物保護センターでは平成31年に現在の老朽化した施設を建て直すため、ふるさと納税をはじめとした寄付を募っています。
これまでの施設と違い、動物たちやボランティア団体により快適な環境となるよう施設の建設を進める予定です。
平成30年3月16日時点では7,625件、合計244,143,488円もの寄付が集まりました。
人と動物が共生できる社会を目指し、神奈川県の新施設開設を応援しましょう!
処分するための施設を生かすための新センター設立へ
保健所やセンターに来る動物たちはみな一様ではありません。
病気の子も、生まれたばかりの子も、私たち人間が誰一人として同じでないように、体格や性格の違う様々な子がいます。
そんな動物たちに合わせた部屋を用意し、シャンプーやトリミングの行える部屋を設置。
また2015年の東日本大震災時、たくさんの犬や猫が路頭に迷いました。
こうした大地震などの災害時に備え、迷子になったり負傷してしまった子たちの一時保護ができるスペースを造設。
動物たちだけではなく、人と動物が共生できる社会を目指し、譲渡会や動物愛護イベント、しつけ教室が行えるホールも建設予定です。
処分するための「焼却炉」「ガス処分室」はありません。
ここは「生かすための施設」なのですから。
神奈川県のふるさと納税を収める方法
神奈川県の動物保護センター新設のための寄付はふるさとチョイスより納付書、またはクレジットカードの利用で税法上の控除の対象となります。
利用可能なクレジットカードは、VISA(ビザ)、MasterCard(マスターカード)、JCB(ジェーシービー)、American Express(アメリカン・エキスプレス)、ダイナースです。
口座での振替でも寄付が可能ですが、この場合税金控除の対象にはなりません。
ふるさと納税は豪華な返礼品が話題を呼んでいますが、自分の納めた税金が「何に使われるのか」を意識してみませんか?
今後もふるさと納税を通じてたくさんの命が救われるよう、動物愛護をふるさと納税にかかげる自治体が増えることが期待されます。
まとめ
都道府県初の殺処分ゼロを達成した神奈川県。
その成功の裏にはたくさんのボランティア団体、自治体の苦労がありました。
全国的には未だ行われている殺処分。
神奈川県の新しい動物保護センターを皮切りに、今後も動物愛護の精神が広く浸透し、全国的にこのような「生かすための施設」が増えることを願ってやみません。
著者も猫2匹と暮らしていますが、飼育は決して簡単なものでも、また、楽しいだけのものでもありません。
命あるものと共に暮らすということは、常に様々な困難が付きまといます。
病気やケガ、思わぬ事故を起こすこともあります。
少しの環境の変化で多くのストレスを抱えてしまう子もいます。
ボランティア団体がたくさんの命を預かっているという現状は、心にも身体にも大きな負担があるということは想像に難くありません。
しかし、こうしたボランティア団体の力なくして殺処分ゼロは成し遂げられないこともまた事実です。
人と動物が本当の意味で安心して暮らせる社会。
殺処分という制度がなくなることはもちろん、命の尊厳を重んじることのできるような人が増えること。
このような社会の実現のために、少しでも多くの方にこの現状に向かい合ってもらえることを心から願います。