著者は動物関係の専門学校卒業後、6年程動物病院に勤務しました。
その経験を活かし、今回は犬の認知症についてお伝えしたいと思います。
飼ったばかりの頃は小さくて可愛かったわんちゃん達も、あっという間に飼い主の年齢を追い越してしまいます。
犬たちは1歳を迎えるころに人間でいう20歳を迎え、そのあとは一年に4歳ずつ年を取っていきます。
シニア期を迎えたわんちゃんで心配されるのが「認知症」です。
症状がひどくなると、あんなに可愛かったパートナーなのに、一緒に過ごすのがつらくなり、安楽死まで検討する飼い主さんもいます。
そうなってしまう前に、認知症について勉強し、発症する前からできることを見つけておきましょう。
この記事の内容はこんな感じ
犬の認知症とは
犬の認知症とは、一度発達した脳細胞が減少し、かつてはできていた行動ができなくなってしまった状態を言います。
人間はもとより、犬や猫などでも発症することが確認されています。
認知症は痴呆、または認知障害症候群とも呼ばれます。
どの犬種でも見られますが、柴犬や日本系の雑種に特に多く見られます。
認知症になる原因
認知症は、わんちゃんの老化や脳の萎縮などが原因で起こります。
近年動物医療の発達やフードの品質向上によりペットの寿命が伸び、人間と同じように犬たちも高齢化が進んでいますが、高齢化が進むと認知症も増加していきます。
認知症の症状
では、認知症とは具体的にどのような症状がでるのでしょうか。
初期の段階では、
- 食欲の低下、または異常な増加
- 耳が遠くなり、呼んでも反応しない
- 視力の低下
- 足元がふらつく
- ちょっとしたことに恐がるようになる
- 甘えん坊になる
などの変化がみられるようです。
この程度だと、もう高齢だから…と気にしない飼い主さんも多いかもしれません。
しかし、認知症は早めの対処が重要です。初期症状が見られたら、なるべく早めに対処していくのが望ましいとされています。
認知症の犬がとる行動って?
認知症が進んでくると、次のような行動が見られるようになってきます。
- 同じところをぐるぐる回る
- 夜泣き、無駄吠えをする
- トイレを失敗する
- 攻撃的になる
- 昼夜が逆転する
- 壁に突き当たって動けない(後退、もしくは曲がることができない)
夜泣きや攻撃性がみられると、やはり飼い主さんも対処に困ってしまうようです。
本人にもどうしようもないことですので、絶対に叱ったり怒ったりしないようにしてあげてください。
過度なストレスがかかると、症状が悪化してしまうこともあります。
認知症の対策ってあるの?
夜泣きや昼夜逆転に関しては、動物病院で睡眠薬に近い薬を処方してもらうこともできます。
しかし眠りが深くなりすぎてなかなか起きれなかったり、それ以外の痴呆の症状が悪化してしまうこともありますので、あまりお勧めできません。
それよりも乱れた自律神経を正すことをおすすめします。
痴呆に効果的なサプリメント
痴呆には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が効果的とされています。
DHA、EPAは海水魚の魚油に多く含まれる脂肪酸で、犬自身は体内で合成することはできません。
サプリメントや老齢犬用の療法食を活用して、適度に摂取させてあげましょう。
これらの脂肪酸は酸化しやすいため、ビタミンCやビタミンE、βカロチンと共に摂取すると効率よく吸収されます。
サプリメントでは、メイベットDCという製品が唯一の認知症専用のサプリメントとして知られています。
DHA・EPAは、皮膚や被毛、関節、心臓および腎臓にも効果的とされ、様々なサプリメントが販売されています。
効果がでるには1~2か月、もしくはそれ以上かかるかもしれませんが、途中で諦めずに続けてあげてください。
ストレス軽減のためのサウンドセラピーサウンドセラピー
また最近では、犬のストレス軽減のためのサウンドセラピーも注目されています。
現在音楽の主流は440Hzですが、交感神経が刺激され興奮状態になりやすいといわれています。
一方528Hzの音楽は自立神経を整え、リラックス効果があるとされ、2018年春犬専門のサウンドセラピーCDが世界で初めて誕生しました。
獣医師監修で、528Hzの周波数の音楽を聴かせることにより、わんちゃんの呼吸数・心拍数が整い、ストレスホルモンが下がることが分かっています。
自律神経についてもっと詳しく↓
認知症にならないためは
認知症は、飼い主とのコミニュケーション不足の犬の方がなりやすいようです。
毎日が単調にならないよう、ただ歩くだけの散歩ではなく、簡単な訓練や遊びを取り入れましょう。
散歩以外の時間でも、なるべく犬に話しかけたりして、コミニュケーションをとるようにしましょう。
- リコールゲーム
公園などの広い場所でロングリードに付け替え、犬を自由に歩かせては呼び戻します。
オイデと声をかけ、飼い主のもとに戻ってきたら首輪にさわってからよく褒め、おやつを与えます。
おやつは毎回あげるのではなく、何回かに一回あげると効果的です。 - 穴を掘る
穴を掘るのが好きな子は意外と多いようで、土の庭があれば最適です。
なければ、新聞紙などをちぎったり丸めたりしたものを、大きめの箱に入れてあげるといいでしょう。
掘ってもいい場所におやつやおもちゃを隠し、自由に掘らせてあげましょう。 - 引っ張りっこ
おもちゃで引っ張りっこをする場合は、けがを避けるために上下ではなく左右に動かしましょう。
犬におもちゃを押し付けるのではなく、飼い主が下がって犬を誘うようにします。 - マッサージをしてあげる
犬は起きた時によく前足を伸ばして大きなあくびをしたりします。
これは一種のストレッチなのですが、高齢になるとやらなくなってしまいます。
出掛ける前に足や背中などを軽くなでてマッサージをしてげましょう。
特に冬場などはケガの防止につながります。
認知症の犬と生活していくには
一度認知症になってしまったわんちゃんは、サプリメントやリハビリによって多少の改善が見られても、完治することは難しいでしょう。
わんちゃんをよく観察し、できる事とできない事を理解してあげましょう。
普段生活している環境に危険があるようなら取り除き、場合によっては飼育スペースを狭くしてあげると落ち着くこともあります。
寝たきりになってしまったら、こまめに排泄や給水をしてあげるようにし、体の大きい子であれば体位を変えたり低反発マットを使って床ずれを予防しましょう。
犬用のおむつも役立ちます。
定期的に体をすみずみまで触って、褥瘡やむくみがないか調べてあげてください。
インターネットで検索すると、様々なわんちゃん用の介護用品がでていますので、調べてみても良いかもしれません。
わんちゃんの介護はとても大変なこともありますが、飼い主さん自身が疲れたりイライラすると、わんちゃんにも伝わってしまいます。
ご自身の無理のない範囲で、できることをしてあげましょう。
まとめ
犬の運動能力はとても優れており、色々な分野で活用されています。
犬種によって得意不得意も分かれており、荷を引く、泳ぐ、跳ぶ、くわえるなど様々です。
本来の能力が発揮されない犬は、人でいう失業状態となり、問題行動やストレス、老化の促進につながります。
散歩中、スマホばかり見ていませんか?
留守番ばかりさせていませんか?
汚れるからといって、遊ばせるのを避けてはいませんか?
毎日の散歩も工夫次第で何倍も充実します。
若いときから毎日散歩に行き、遊び、しゃがんで話をし、時には一緒に走り、信頼関係を作っておくことが大切です。
動物は本来寿命ぎりぎりまで頑張ります。そしてぱたっと終わります。
なので、たっぷり運動して心臓を使い、筋肉を作っておくことが大事なのだそうです。
普段からブラシをかけ、スキンシップをとっておけば、いつまでも飼い主と一緒に出掛けようとしてくれます。
犬は健気で、飼い主が行くなら自分も頑張らなければと思う生き物なのです。
本当の意味で散歩の楽しさを知っている、そういう関係を作っておくことが健康寿命を伸ばし、痴呆の一番の予防になります。