今回は猫が下痢をしたときに、考えられる病名をまとめました。
あくまでも参考程度にとどめ、あまりに下痢が続くようなら、必ず獣医師の指示を仰ぎましょう。
下痢になるメカニズム
口から入った食べ物は胃から小腸に入ったときは、水分を含んだドロドロの状態で大腸に送られ、一定期間留まり水分を再吸収されて、適当な堅さの便となります。
つまりこの便のできるまでの正常な過程が崩れると、下痢になってしまうのです。
下痢の種類は、主に3つです。
運動性異常の下痢
1つには大腸で水分を再吸収するための十分な時間がとれず、正常よりも速く通貨してしまえば、水分を多く含んだままの下痢となります。
これは寒さのストレスや精神的なストレスなどにより、蠕動運動か亢進してしまうことも1つの原因となるでしょう。
浸透圧性下痢
食物のある物質が、大腸において過剰の水分を残留(保持)させる場合も、便の水分含有量が多くなり下痢を起こします。
分泌性下痢
感染症の下痢の場合は、細菌の毒素が腸の粘液分泌を多量にして、結果的に水分を多く含む下痢を起こします。
下痢をしている猫は、以下のような点に注意して観察しましょう。
猫が下痢をしている時のチェックリスト
下痢の発症の仕方によって急性と慢性と区別でき、小腸性か大腸性かも区別することができます。
また飼い主が観察しておくと、いざ病院へかかるときに獣医師に役立ちます。
- 排便の回数
- 排便の量
- 堅さ
- 色
- 臭い
- 粘膜が出ている
- 出血がある
- 排便時、痛そうにしているか、排便後もいきんでいる
- 排便時は特に違和感がない元気な下痢
- お腹がゴロゴロという音がきこえる
- 食欲のある下痢か食欲のない下痢
急性の下痢
突然発症します。
原因を特定してから治療することになりますが、治療をしなくても一日で自然に治ってしまうこともあります。
慢性下痢
食欲はあって元気もあるのに、下痢がどうしても治らない。
もしくはいいうんちが出たと思ったら下痢をして、次に軟便になってという便の状態を繰り返し、数週間から数ヶ月続いているということも珍しくありません。
慢性の下痢を起こす原因も様々ですが、治療は原因を特定診断することから始まります。
検便のメリット
細菌や寄生虫、原虫、線虫、食物の消化具合を見ていきます。
また、便の特殊培養検査により、細菌や真菌の同定を行うこともあります。
慢性の下痢は原因が1つに限らず、複数の原因が重なりあっていたり、基礎疾患の悪化に伴う二次的な状況からおこるなど、原因を特定することが難しい場合もあります。
小腸性下痢と大腸性下痢の区別は、以下のように区別できます。
小腸性の下痢は大量のソフトクリームの解けたような下痢便、もしくは悪臭を伴う水様便がみられます。
それに伴い嘔吐、食欲の減少、体重の低下が認められます。
大腸性の下痢は便がゼリーのような粘膜に覆われていることがあります。
便に血がみられることもあり、便をしたあとまだ完全に出きっていないような様子が見られ、通常より排便の頻度は増えます。
下痢に伴って、食欲の低下、体重減少が起きている場合は腫瘍やホルモン異常など、命にかかわる重篤な病気の可能性があります。
腸自体の組織検査などで診断する必要もあります。
では下痢から考えられる病気をみていきましょう。
細菌性下痢
健康な猫の糞便にも認められる細菌であっても、何らかの理由で猫に下痢を起こすことがあります。
猫に下痢を起こす細菌として、サルモネラや大腸菌があげられます。
細菌によって、腸の上皮を侵襲して下痢を起こすタイプ、腸毒素を産生して下痢もおこすタイプ、など一言に細菌性といっても下痢を起こすメカニズムは複雑です。
病原菌が下痢をおこすのは当然のことですが、別の理由で猫のカラダが弱っているときに、通常の腸内細菌が細菌性の下痢を起こすことも考えておく必要があります。
猫が基礎疾患を持っていること、病気であること、免疫が抑制されている状態にあること、環境が不衛生であり、多頭飼育で過密環境というストレスがかかっていることなど、様々な原因も考慮していきます。
治療方法
猫の状態をみつつ、原因菌に効果のある抗生物質の投与を行います。
真菌性下痢
カンジダ、アスペルギルス等が原因となる下痢をおこします。
真菌が腸粘膜に入り込むように感染し、結節を形成することもあり、原因を知るためには真菌培養検査等を行います。
病原性のある真菌、非病原性の真菌などが分離されます。
治療
抗真菌剤の投薬が一般的です。
真菌性の下痢を起こす猫の場合、猫自体の問題点、免疫力、抵抗力など、宿主側の要因を考える必要があるでしょう。
ウイルス性下痢
ウイルス性の下痢には、いくつか種類があります。
猫汎白血球減少症/パルボウイルス感染症
パルボウイルスが原因の白血球減少を伴う伝染病で、子猫の場合は死亡率の高い病気です。
パルバウイルスが消化管の上皮細胞に増殖し病変をつくり、正常な腸管の働きを消失させ水様性下痢を起させます。
パルボウイルスは骨髄も損害し、骨髄の機能を低下させ、汎白血球減少症を起こします。
猫パルボウイルス感染症は、糞便中に多数のウイルスを排出します。
この病気にはワクチンがあります。
腸コロナウイルス
コロナウイルスが原因です。
腸絨毛の上皮細胞に感染し下痢をおこします。
腸コロナウイルスは猫の血液検査で抗体価を測定することができます。
腸コロナに感染している猫の便は粘膜に覆われている場合や、便の最後に血が付くこともあります。
発熱があるため食欲がなくなり、運動性が低下することがあります。
長期間、軟便と下痢を繰り返すことがあり、このウイルスは同じコロナウイルスの仲間で、猫を死に至らしめる伝染性腹膜炎ウイルスとの関連性が示唆されており、注意が必要です。
猫白血病ウイルス
レトロウイルスが原因です。
ウイルスにはリンパ系、骨髄に感染を広げますが、腸にも感染が及び、腸の上皮粘膜が傷害され、腸炎の結果下痢がおこります。
白血病ウイルスは消化管リンパ腫など、悪性の腫瘍を引き起こします。
猫白血病は様々な症状を引き起こします。
食事性下痢
猫は変わった嗜好性により、食べ物ではない観葉植物、セロハン、魚肉などの生物を包んであったビニール袋などを摂取して下痢を起こすことがあります。
また牛乳の乳糖を分解する酵素がないため、牛乳を飲むと下痢を起こしますし、香辛料の入った食べ物で下痢を起こすこともあります。
市販されているキャットフードに含まれる添加物などに対して、嘔吐に続く下痢をを起こす胃腸疾患がみられることがあります。
腐った物を誤って食べてしまえば、食中毒の下痢を起こします。
猫は「ガムを噛む」かのように、歯ざわりの気に入ったプラスチックやヒモ、ウール、ティッシュ、そして毒性のある葉を噛みます。
そして噛んでいる間に飲み込んでしまい、結果的には食べてしまうので、消化できない異物の接種が下痢を引き起こしてしまうのです。
飼い主は自分の猫の嗜好性をいち早く認識し、それらは猫のいる環境に置かないよう心がける必要があります。
またキャットフードを含む食事アレルギーの疑いがある猫の場合は、今まで食べていた食事を一切やめることから治療が始まります。
獣医師の指導の元、アレルギーの猫のために作られた処方食に切り替えます。
猫にアレルギーを起こしにくいタンパク質である鶏肉、ラム、ウサギなどが原材料のフードもおすすめです。
炎症性腸炎
炎症性腸炎は、消化官の粘膜に炎症性細胞が浸潤することを特徴とする腸炎で、体重減少を伴う下痢を起こします。
炎症性腸炎は粘膜に浸潤する炎症性細胞の種類によって分類されます。
症状は嘔吐・慢性的な小腸性の下痢で、便の堅さは軟便、もしくは水様性便になります。
好酸球性腸炎は、小腸に好酸球は浸潤すると水様性下痢と食欲不振、それに伴う体重減少が見られます。
大腸への侵襲は粘液性の下痢を起こし、この疾患を持つ猫の血液検査においては、好酸球増加が認められることがあります。
まとめ
下痢にも種類があり、食物が原因の浸透圧性下痢と、ウイルスが原因の分泌性下痢に分かれます。
ウイルス性の下痢の場合は、子猫の場合死に至る可能性もある病気もありえるので、子猫の場合の下痢はすぐに獣医師にかかった方がいいでしょう。